私達を隔てるものは何もなかったけれど
硝水
第1話
君が前日の晩から一生懸命準備してここまで丁重に持ってきてくれたチョコレート菓子を一体どうやって破壊しようかと計画している時点で、自分の性格の悪さは自覚している。
寿命が金で買える世界において、富とは長寿であり、長く生きるほど人は暇潰しを求める。暇潰しの中で一番上等なものはもちろん他者との対話であり、自分と同じ時を共にする存在を見つけるのは早いうちがいい。いつ一緒に死ぬかをよく話し合わないといけないから。
「ねえ」
「はい?」
「心ここに在らず?」
「はい、ありません、なので渡せません」
「そう、残念だな」
「でも、あなたに興味がないことが百%本音であることが、少し悲しいです」
近づいても近づいても、出会うことはない。不均等にちびた赤青鉛筆みたいに、私達はずっと同じではなかった。
「次はバラバラの身体で、僕達は自分の意思で」
一本の直線の、端と端が、交わるまで。
私達を隔てるものは何もなかったけれど 硝水 @yata3desu
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