第一話 知らないファイルは開かないほうがいい(1)

 あれから数日経った日の夕焼け差し込む放課後の教室、生徒たちは部活へ向かったり、駄弁ったりしてそれぞれの時間を過ごしている。

 その一角で夏陽は友人の霧山きりやま和羽かずは浦須うらす華奈かなと話している。


「今日も終わったねー」


「そうだな、っておーい華奈、起きろー」


「ぁあ…うん……起きてぇ…るよぉ…」


 寝ている華奈を和羽は肩をゆすって起こそうとするが、少し目を開けてはまた眠ってしまった


「まぁ、寝かしといてあげなよ」


「それもそうか」


 二人してその穏やかな寝顔を見守りながら、少し談笑していた。

 そうしているうちに、徐々にクラスメイトが教室をでて、残るは夏陽ら3人のみになった頃、数学教師の皆月みなづき佳澄かすみがやってくる


「浦須、いるか?」


「あ、皆月先生、どうしました?華奈ならここで寝てますけど」


「ちょっと起こしてくれないか?今日こそは補習を受けさせないといけなくてな」


「あ~、今学期もやばそうな感じですか?」


「まぁ、そんなところだ」


 二人は先生と話しながら華奈をおこす、二人のおかげでやっと目を覚ました華奈は眠い目をこすりながら、まだ寝ぼけているようで


「ん~、夏陽どうしたの?」


「浦須、お前忘れてないよな?」


「あ……ワスレテナイデスヨ?」


 顔から血の気が引いていく華奈に、夏陽と和羽は思わず笑ってしまう。

 それを見た華奈も、黙ってられないと夏陽を指さし


「夏陽も合格点ギリギリだったので補習を受けるべきだと思います!」


「ちょっ、道連れ!?」


「ん?天駆も来るか?」


「いいえ、結構です」


 流れ弾が飛んできた夏陽は一刹那も開けず、そう返すと。


「というわけだ、浦須。行くぞ」


「うわぁぁぁ、裏切り者めぇぇぇ」


 佳澄先生にがっしり手首を掴まれ、捨て台詞を叫びながら連行されていく華奈を見送った和羽はため息をつく。


「あいつはホントにあんなので大丈夫なのか?」


「まぁ、なんとかなるんじゃない?」


「まぁ、そうだな」


 無責任に応える夏陽に少し笑みをこぼす和羽だったが、時計をみるやいなや


「あ、私も行かなくちゃな」


「生徒会?」


「あぁ、文化祭が近づいてきて少しづつ忙しくなってきててな。じゃあ、また明日」


「じゃあ、頑張ってね」


 一人ぽつんと残された夏陽は家には帰りたくないが、屋上でだらける気にもなれず。取り敢えずで部室へ足を運ぶことにした

 

「たのもー」


「どこの道場破りですか……」


 勢いよく扉を開ける夏陽に涼樹が力なくツッコむ、涼樹は勉強していたようで、夏陽は少し申し訳なくなる。


「あ、ごめん、邪魔した?」


「いや、別に大丈夫です、休憩時間中なので」


「そう?ならよかった」


 そう言って、自分の席に鞄を置いた夏陽は乱雑にものが散らばった棚を漁りだす


「先輩、何探してるんですか?」


「えーっとねぇ……ん?なにこれ」


 首を傾げながら取り出したのは埃を被った白色の箱、中身は大量のUSBメモリであった。


「これは何ですか?」


「うーん、なんだろう、私もこれは見たこと無いし……まぁ、見てみようか」


 その中の1つをパソコンに差し込み、中のアプリを開くと、何やらゲーム画面が映る

 それはある種のシューティングゲームのようでお世辞にもクオリティが高いとはいえないものだったが、作った人の熱意が感じられるようなものだった。


「これ、凄いっすね」


「ね、こんなのあったんだ」


 ゲームを軽くプレイしながら、興味が湧いてきた2人は


「ねぇ、今からこれ全部確認してみない?」


「奇遇ですね、先輩。僕もそう思ってました」


「よし、じゃあやっていこうか」


 そう言って2人は1つづつUSBを確認していく。

 それのほとんどが何かしらのゲームだったり、ファイルだったり動画だったり多様なものだった。

 

「これって、なんか今までの作品集的なやつですよね」


「そうみたいだね――っ!」


「先輩!?」


 慌ててマウスを動き回し、連打する夏陽に何かあったかと聞く涼樹だったが夏陽は少し頬を赤らめながらも平静を装う


「何もなかったよ?うん、何もなかった」


「そうですか?なんかやけに慌ててますけど」


「なんでもないって、ちょっとびっくりしただけ」


「そうですか、ならまぁ、いいんですけど」


 といってまた画面に向き合う涼樹を確認したところでほっと胸を撫でおろす

 興味本位で開いたファイルがエロ画像ファイルだったらそりゃそういう反応になるのだろう。

 夏陽は『むしろ、これが涼樹じゃなくてよかったかも』と思いながらそのファイルごとゴミ箱に入れ完全に削除して、やっと少し落ち着いたようで『にしても男子ってあれぐらい大きい方がいいのかな…』と自分の小さめな胸に問った。




 

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先輩、部活の時間です 薄明 黎 @singononote

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