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「全員の意思確認は取れたわけだけど……、どうやってあれを突破する?」
現在不在の二人に確認も取って、九条さんを中心に作戦会議が始まる。
「あれって?」
「知らないのか……まあ、大まかに突破すべき障害は二つ。一つは御社殿の魔術師部隊、一応精鋭だが、これは六花ちゃん一人で何とかなるだろう。問題は二つ目、あの神だ。見たところ、御社殿への鍵を閉じているのがあれ。つまり、あれの突破は必須」
「神……」
「そうだな。六花ちゃん以外じゃ話にならないと見てもいい。それでも勝てるかはわからないが、大まかな目標としては、六花ちゃんを無傷の状態であれに当てる。それが妥当な作戦だ。じゃあ、俺は索敵を始めるから、細かいところは充輝ちゃんに任せるよ」
そう言って、九条さんは立ち上がる。
「じゃあ、作戦だけど……」
・・・
「じゃあ、これで、今夜」
「了解」
一時間ほどの会議を経て、作戦の共有は済まされた。深夜一時、私たちは御社殿に襲撃をかける。
「六花さん、有矢は……」
充輝ちゃんが心配そうに目を伏せる。
「今のところ、嫌な感じはしないけど……。伝えなくちゃいけないことがあるの。だから、急がないと」
「……はい、手伝います」
この子の気持ちはなんとなく察している。有矢もきっと、そうなのだろう。
有矢は私に縛られている。私を助けたことが呪いになっている。だから、これが終わって、有矢がそう選んだなら、私は応援するつもりだ。
「九条さん。ぶっちゃけ、勝率は?」
九条さんは机の上でなにやら禍々しい道具を弄っている。その表情は今までにないほど真剣そのものだ。
「さあ。なんにせよやるんだろ? なら聞かないほうがいい」
「聞いたら油断しちゃうから、ね」
「——そうだな。終わったら、有矢共々手伝ってもらう。今度は俺の用事だ」
魔法世界の統治。九条さんの最終目標らしい。月に一度、偉い人と楽しくお茶をすればいいらしいが、どこまで信じていいものか。
「紗幸ちゃん、大丈夫?」
表情は普段どうり、だが、手の震えは隠しきれていない。
「終わったら、打ち上げだよね。——奢りですよ、楽しみにしてます」
頼もしい。魔法使いを相手にするなら紗幸ちゃんはかなり働いてもらうことになる。明日は焼き肉だ。
「2人は……いいの?」
里桜ちゃんと宗二くん。私の中ではすでにセット扱いだが、まだくっついていないらしい。
この街に来て最初の友達と、有矢の親友。今回のことを頼んだ時にも、二つ返事で了承してくれた。
「六花さんにお返しするチャンス、って感じ」
「六月の時は、ね、迷惑かけちゃったから」
「別に、返さなくても……」
「無償で助けたって言うのなら、私たちも同じようにするよ」
「うん、そっちの方がいい」
——これで、全員と話し終えた。ここに居る人たちとは。
那古野さんと、都ちゃん。
都ちゃんに関しては付き合いは短いが、那古野さんによくなついているように思える。私に対してはそっけないけど。
那古野さんは出会ってすぐのころは頼れる大人だと思っていたが、最近案外そうでもないかもと思えてきた。化けの皮が剥がれたとみるべきか、それほど心を許してくれたと見るべきか。どちらにせよ、楽しい友達であることに変わりはない。
さあ、後は時を待つだけだ。
◇
こんにちは、那古野奏です。
突然ですがさようなら。
突き刺さった刃物を引き抜く。これで一人目だ。
都はあれでも十三歳。家には自分で帰れるだろう。
——今現在、御社殿の中には第六感の片割れが居る。しかもそれは超危険人物ではないか。だとすれば、死ぬわけにはいかないようなお偉い方々はどこに行くのだろう。一番安全な場所、そう、神の近く。つまり、御社殿の外に出て来ている。これはまたとないチャンスだ。いけ好かない魔法使いどもを皆殺しにする、チャンス。
二人目。よし、順調だ。
「やあ、佐才麻衣」
口の中に何かがこみあげてくる。初対面、一言目から嫌がらせとは、どんな邪神様なんだろうか。
「神様? 思ったより早かったですね」
「僕はすべてを見通せる。神だから」
「そう……。それで、お靴でもお舐めすればおよろしいので?」
室内じゃ瞬間移動しても逃げきれない。戦うのは論外。靴を舐めるしかないが、神は裸足だった。
「不敬だね。でも、人殺しはそれぐらいじゃないとね。——ああ、親の顔が見て見たいよ。佐才さんだっけ」
的確に挑発してくる。
「遺影でよければ。それとも、会いに行かれますか」
どうせ死ぬならその挑発、乗ってやろう。
「——神様。なんでこんな世界になったのでしょうか」
「さあ? イザナミあたりに聞けば」
「誰も、知らない。誰かが望んだわけじゃない。根本的に直らない」
いや、理屈はやめだ。馬鹿らしい。
誰が望んだわけでもなく、私は私になってしまったのだから。
――さあ、私らしい言葉は、こうだ。
「邪魔だよ、死ね、クソガキ」
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