第9話 その雨はライオンのように始まり、
「お姫さま、それはいけません!ボクのことはいいので、早く国に帰ってください!お姫さまひとりなら、まだ間に合います!ですから」
しかしお姫さまのその決意の目は変わりませんでした。
ぼんどりは諦めたように、「そうですよね、お姫さま。あなたはいつもそうです。誰の静止も聴かず、いつもそうやってひとりで突っ走るんですから」と呆れながらも、笑っていました。
雨はますますひどくなってきました。
山の頂上から高らかなヘビの歌声が聞こえてきました。
どこかの小さな洞窟では、アザラシが楽しそうに仲間とダンスを踊り、またどこか遠くの土地では、はぐれたダチョウが家族との再会をよろこんでいます。
「きいて、ぼんどり。ほんとうはわたし、誰かに好かれたり、人気者になりたかったわけじゃないの。わたしは誰かの役に立ちたかったのよ」
お姫さまはそういって、指をパチンと鳴らしました。
「もうわたしには歌う力も、上手に踊る力もない。虹の国にも帰れない。けど誰かのためになるなら、これでいいの」
「お姫さまは、これからどうするんですか」
ぼんどりは悲しい顔をしています。
「少し休んで、地上に行ってみようと思うの。こんなわたしでも、何かできるかもしれないと思うから」
「さようなら、お姫さま」
「さようなら、ぼんどり」
お姫さまは、ぼんどりの体力と自分の体力を交換し、それからお姫さまは最後の力を振り絞って、ぼんどりを夜明けの空に放ちました。
力を得たぼんどりは、まっすぐに虹の国に飛んでいきました。
ぼんどりの流した涙は、救いの大雨にまぎれて地上にむなしく落ちていくのでした。
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