第3話 部紹介プロモーション
「今日あれか。本入部か」
部室に向かう道中、ふと思い出して三好に言う。
「あー、せやな。いやほんまに何人入ってくれるんやろ……?」
今年は一年がそれなりに入ってくれないと厳しい。
俺たち男子ソフトテニス部は、現在三年が10人、二年が4人で構成されている。今年先輩たちが引退することを考えると、2人はマスト。せめて4人は欲しい。というのも、ソフトテニスの団体戦は6人必要なのだ。
「もうこれは自信もって言えるけど俺は俺の仕事をちゃんとやった」
「ほんまにそれはそう」
俺は部紹介の動画およびインスタの宣伝画像作りを担当していた。出来はかなり良い。父さんに見せたら、なんか泣けるわ、という評価をいただいたくらいには出来が良い。
「いやー……一個難点があるとすればな?」
ためらいがちに三好が言う。
「え、何?」
「
「えどういうこと?」
「お前の広告がガチすぎてみんな企業のプロモーションや思ってる可能性がある」
「……マジで?」
「オレやったらすぐストーリー飛ばすわ」
不覚……!
この手の画像編集を趣味にしている俺は、この部紹介資料の制作にはかなり力を入れた。それがまさか裏目に出るなんて……!
「なんやねん……まるで高校生が作ったかのようなガタガタの画像やったら良かったんか……?」
「まあ人生そんなこともあるよ」
「おいあんま適当言うな」
給水機の角を曲がると部室に着く。俺たち、男子ソフトテニス部の部室は旧部室棟だ。メリットはテニスコートに近いこと、デメリットは錆びついた鉄扉が開閉しにくいこと。
そして、その部室の前に新一年生が、いる……! それも1、2……6人はいる……!
「芳賀! 革命や!」
「6人まじで?!」
喜びが隠しきれない。いやだって俺らの学年4人やし。
「え、みんな軟テ?」
分からない人のために説明しておくと、軟テとは軟式テニス、つまりソフトテニスの略称である。……俺は誰に説明してるんや。
「あ、そうです。ここで良かったですよね」
「おー、ええよええよ!」
彼は確か体験入部も全日来てくれていた。めちゃくちゃ嬉しい。
「今日はみんなでコロッケ食いに行こう!」
アホみたいに喜んでいる二年を微笑ましく見守る先輩たちと、怪訝な目を向ける新入生。お前らも一年後こうなるんやで……。
結局、今年の一年は9人。
俺の部紹介動画と画像……多少は貢献したと思いたい。
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