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ナイフだと日用品を扱う店でも扱っているとのことで、冒険者ギルドに近い店で小型の獣の解体や草花の採集に向いたナイフをいくつか揃えた。


クロードは武器には適性なしと言われているので、ずっとシオンに習っている護身程度の体術を続けていく。

武装していると見せるのも必要とのことなので、近いうちに大降りのナイフか短剣くらいは見てみようと思う。




「さて、では外に行きますが……この町では日没と同時に門が閉ざされ、馬車は通行できなくなります。徒歩であれば門番に身分証を出せば通用口から入れてもらえます。

 あまり良い顔はされませんので、日没前に戻った方が無難です」


「馬車は夜だと夜営?」


「そうなりますね。一応門番が気にかけてくれますし、町の近くは魔物も殆ど出ないので道中の夜営よりは安全ですよ」


「なるほど……今日は、思い付きで夜営なんてしたらキャリスが怒るね」


「私が怒られますね。夜営が必要なほど遠出するような素材をお求めのときは、素直に買取や収集依頼を出してください」


はいと良い子の返事をして、町の西側の門へ向かう。薬草が数種類自生している他、スライムや丸耳うさぎ等の穏やかなモンスターが生息しているという。


丸耳うさぎは純粋に可愛いし、成長すると格闘系の前衛ファイターに進化するので戦力として期待できる。スライムは進化先が多様でとても面白いので、良い出会いがあるといい。


西門を抜けた平原は新人冒険者が練習の場にしているだけあって、門番ものんびりしたものだ。

軽く会釈すれば「頑張れよー」と手を振られたので、行ってきますと振り返した。






西の平原は、あちこちに草むらが点在する。

その草むらに、丸耳うさぎやスライムが食事に訪れるのだ。

雑草とひと括りにされる草むらの中に、時折魔力を吸い上げたり保持したり等で薬効を持つものがある。人間が「薬草」と呼ぶそれらは、扱う者からすればその中にもいくつも種類があるのだが。


閑話休題。


少しだけと約束したので、今回は草むらに薬草があるかを確認。可能であればテイムできそうな魔物がいるか試してみるのが目的だ。

錬金術には、スライムのパートナーがいると安心できると聞く。薬草の加工に役立つ進化をする場合があるらしい。


「スライムは、あまり攻撃性はないのだっけ。あの子は、近づいてみてもいいかな」


「人間を見ても向かってこないのであれば、近づいても問題はないでしょう。私が警戒していますので、試して構いませんよ」


小さな草地で機嫌良さそうに草を取り込んでいる、掌に収まる程の大きさの薄緑色のスライムがいた。

食事中にごめんと隣に座れば、そこで初めてこちらに気づいたらしいスライムが見上げてくる気配がある。

スライムに目というものはないのだが、なんとなく視線が合っているような感覚をしばらく続けていると。


ぷにっ


足を柔らかく押してくる感触。こちらに対して好意的な興味を感じる触れ方に、クロードもそっと手を伸ばす。


「ふふ、ぷにぷにだ。抱いてみてもいいかな?」


問いかければ、大きく跳ねたスライムがそのまま掌に着地した。ふるふると震えてなんだか嬉しそうだ。


「ねえ、スライムくん……ぼくの、家族にならない?」


恐る恐る問いかけると、一瞬何かの糸がスライムと繋がったような感覚があった。


『ますたぁ!!』


頭の中に元気な幼い声が響く。今の感覚が、テイムしたということなのだろう。

ではこの声は、手の上で震えるスライムのもの。

クロードの胸の内は「可愛い!!愛おしい!!」の気持ちでいっぱいになってしまった。


「おや、テイム成功ですね。最初のパートナー、おめでとうございます」


「ありがとう。この子といろいろ試してみたいし、名前も考えたいから……少しだけ薬草を探してみて、今日はもう町に戻ろうかな」


「かしこまりました……おや?」


クロードの掌で伸び縮みしていたスライムが、薬草と聞いて飛び降りる。


『ますたぁ、こっち。あまいくさ!!』


「案内してくれるみたい」


「人間が薬草と呼んでいる草を判別できるんですねぇ……冒険者を観察していたのでしょうか」


「ぼくが頭に浮かべたものが伝わったみたいだよ?テイムしたらこんな風に意志疎通できるんだね」


思っていた以上にスライムは優秀なのだと、シオンは感心して頷いた。

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