7月 感情の爆発
第32話
高熱を出してぶっ倒れてしまった日を境に、なぜか私は同じ部署の人達からものすごく親切を受けていた。
連絡先の交換の依頼が次から次へときてしまい、戸惑ってしまう。特に隠しているわけでもなかったけれど、壊してしまうかもしれないから今まで遠慮していたのだが、みんながあまりにも熱望してくるため、よく壊してしまうからと大雑把に説明をしたけれど、逆に「大丈夫! もし日向さんのスマホが壊れてしまっても私たちのところには日向さんのものが残っているからすぐに連絡をしてあげられるから!」と言うことらしい。
そんなふうに考えたことのなかった私はびっくりしてしまい目を見開く、そんな私に不安そうにして覗き込んでくれた同僚の人たちに、私は慌ててそんなふうに考えたことがなかったからと言い、ただびっくりしただけだからと伝えて、おずおずとスマホを取り出す。
仕事用にと言う理由でメールアドレスと電話番号を1人の人に教えれば、あとは自分の方から部署内にメールで回しておくねと言われお礼を言う。代わりにいろんな人から一気にメールが送られて来るだろうから登録してあげてね、と言われ、できるかな……と内心で思いながら、難しそうだったら仲のいい村上さんに教えてもらうと良いよと言われ、私はそうか、と思いこくりと頷く。
あとはメッセージアプリへの登録もせがまれた。仕事ではない繋がりも欲しいの! と言われて仕舞えばそれを無碍にすることはできず、けれどそれこそ操作方法がよくわからないと話せば、スマホを借りても良いかと言われたため、私は躊躇いなく渡す。隣で見せるようにしながら説明をして操作を教えてもらい、私は今までにないほどの友達がそこに登録されることとなった。
もたもたとしながらもそれでもせっかくの休憩に私に丁寧に教えてくれた彼女――神崎さんにお礼を言い、私は外で待っている莉子ちゃんとお昼に出かけたのだった。
「倒れたって聞いたけど、大丈夫なの?」
「うん、今はもう平気だよ。みんな、すごく優しいね」
「それは紬の人徳によるものでしょ。手放しちゃダメだからね」
「う、うん……呆れられないように頑張るね……」
そう言いながら、社食にたどり着き、窓側の空いている席に座る。大体は私たちは窓側に座って食べている。私がお弁当ということもあり、あまり真ん中の方だと食堂で買った人がすぐに食べられないからと思っての行動だ。
莉子ちゃんも食堂で買ってはいるけれど、窓側が好きだから気にしないでと言ってくれた。多分、私を気遣ってくれたのもあるけれど、この場合は莉子ちゃんのそんな言葉に甘えている。
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