第25話
莉子ちゃんも、借りれるのならちゃんと体をリラックスさせるためにも借りたほうがいいといっていたため、私は完全にお言葉に甘える形となっている。
体の火傷の痕はやっぱり残ってしまって、おじいちゃん先生にごめんな、と謝られてしまった。
けれど、元々は私が自分を過信して病院に行かなかったことが原因だし、しょうがないことだという認識も持っている為、気にしにでください、としか言えなかった。
通院にもなれてきた頃、私は通院先の病院で信じられない人物を見つける。
思わず体が強ばり固まって、その場に立ち尽くしてしまうほど、私は驚愕を隠せなかった。
その2人は、何かを言い合いながらも確実にこちらに近づいてきていて、でもまだ私には気づいていない。逃げるなら、今逃げないといけない。そう思っているのに、体がなかなか動かない。
すぐに動いて、隠れながら出入り口に行かないと。林さんが外で待ってくれている。でも、その付近にはまだその2人がいて、誰かを探すように視線を巡らせていて。
結果。
私は、2人のうちの1人と、視線が絡まってしまった。
その瞬間、私はきた道を戻って今までいたおじいちゃん先生の診察室に駆け込んでしまう。突然走って戻ってきた私を見て、おじいちゃん先生は驚いたように目を見開いていたけれど、私の表情を見て何かを察し、しばらく奥に隠れていなさいといってくれる。そばについていた、中年ほどの看護婦さんが私の背中をさすりながら奥に案内してくれて、なんとか隠れる。
私が奥に入ったのと同時に診察室の扉がノックされる音が聞こえてきて、体がビクッと過剰反応をしてしまう。
そばにいた看護婦さんが、「大丈夫よ、紬ちゃん」と優しく、丁寧に、私を落ち着かせるために声をかけてくれなければ、多分、パニックを起こしていたと思う。
それよりも、なんでここにあの2人がいるのか。ぎゅうっと体を小さく丸くして、震えさせる私に、看護婦さんはずっと背中を優しく撫で続けてくれる。
「はい?」
「すみません、入っても良いですか?」
「……どうぞ」
そういって、おじいちゃん先生が、渋りながらも扉の外から聞こえてきた声に応える。
そうして入ってきた2人――朝比奈さんと林さんの息子さんが、おじいちゃん先生の病室に入ってきてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます