5月 理不尽な態度
第14話
あの日から私は林さんにとてもよくしてもらっていた。ことあるごとに自宅に連れて行ってもらい、食事を食べさせてもらっている。
連絡先の交換もしたぐらいには愛さんとも仲良くさせてもらっていた。流石に毎回ご馳走になるのは申し訳なかったので、林さんに頼んで食材を買いに行かせてもらい、私が作ってご馳走することもちょくちょくあったりもした。愛さんは相変わらず目をキラキラとさせて私が作ったものをおいしいと言ってたくさん食べてくれる。
それが嬉しくて、私も調子に乗って作ったりしていた。
そんなある日。
「つむぎー、ご飯行こー」
ひょこーっと私のいる部署に顔を出してくれたのは莉子ちゃんだった。どうやら少し早めに休憩に入れたらしく迎えに来てくれたらしい。私はそれに笑顔で手を振って応えて自分がしている仕事を一区切りさせて莉子ちゃんのそばに駆け寄った。
「今日もお弁当?」
「うん。節約しないと」
「相変わらずねー。まあ、そのおこぼれを預かるのはありがたいからいいけどさ」
「莉子ちゃんが、私が作ったものを美味しそうに食べてくれるから、つい作りすぎちゃうんだよ?」
「なんて健気な子なの!? 大好き!!」
「私も、莉子ちゃんのこと大好きだよ」
そう言いながら、私たちは笑顔で社食に向かう。以前、社外に出たときに華と会ったことが莉子ちゃん的にはどうにも気に食わなかったらしく、それからは絶対に遭遇しないであろう社内でしかご飯を食べていない。
私としては、会ってしまったらそれまでだと思っているため、仕方がないと思っている部分の方が大きいけれど、莉子ちゃんに何かしらの実害などが加えられることには我慢ならないため、今は莉子ちゃんの意見に同意して、社内で過ごすようにしていた。
社食について席を二人で探していたとき。
「日向様」
「!?」
突然聞こえてきた若い男性の声に、私は体を揺らして思わず思い切り体を捻って声のした方を見てしまう。私のその反応に驚いたのか、声をかけてきた相手――林さんのご子息である彼は少し目を見開いた。
何かを言おうと口を開きかけたのだろうけれど、その前に私の隣にいた莉子ちゃんが反応して声をかけてくれる。
「紬、大丈夫!?」
「あ、うん。ごめん。突然声をかけられたから驚いただけだよ。大丈夫。大丈夫だから」
「……そう。そういうならまだ我慢してあげる。…………で? そちらの男は何か用でも? あたし達、今からお昼なんだけど?」
「……それは大変申し訳ありません。日向様と少しお話をしたと思いまして」
「無理。だめ。却下。はい、退場をお願いします。出口はあちらです」
そう言って、莉子ちゃんがバッサリと切り捨てて、出口を指さしてぞんざいに案内する。
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