第13話

「あ、えっと……私の方が、やっぱり年下ですし、その……心地が悪いんです……」


「……なるほど、では、家内と同じ呼び方をしましょう。しかし、あなたを敬うことをやめるわけにはいきませんので、口調にはどうか目を瞑っていただけますか?」


「……わかりました」



 そう言って私はこくりと頷く。むず痒さは否めないけえど、それが林さんの仕事の一環なのだということはわかっているため、下手に強要をするものではないし、私が強要できることでもない。


 きっと、1年後には私はこの人たちとの関係も無くなってしまう。そう考えると、ただただ申し訳ない気持ちにいっぱいになた。


 それから、愛さん――林さんの奥さん――とおしゃべりを交えながら、と言っても私は聞き役に徹していたような気がするけれど、それでも途切れることなく私に話しかけてきてくれていたため、自分でも気付かないうちにリラックスして過ごさせてもらったらしい。


 すき焼きもおいしいくいただいて、お礼を述べれば、「またいつでもきてね!!」と愛さんが目をキラキラとさせていってくれたため、私もなんとか微笑みをのせてはいと頷いたのだった。


 すでに時間は10時を回り、帰らなきゃなぁ、とぼんやりと考える。



「……今日もシャワーだけになるかなぁ……」


「え?」


「え? ……あ」


「……紬ちゃん、湯船に浸かっていないの?」


「えっと……節約のために……」


「相手があの朝比奈ならそんなことをする必要もないでしょう。どうして?」


「え、えと……」



 愛さんがものすごく怖い。え、突然のプレッシャー……!



「ハニーの言う通りですよ、紬ちゃん。ちゃんと体を湯船に入れないと、疲れはなかなかとれないでしょう?」


「……でも、私は夜中に入っているので、あまり大きな音も出せませんし……その、私が入るときにはすでにお湯が抜かれているので、浸かることもできなくて……あ、でも、ちゃんと湯船は洗ってから出るようにしています!」


「そういう問題じゃないわ。ダーリン。今すぐに湯船を見に行ってきて。ぬるかったら追い焚きをお願いね」


「了解、ハニー」


「さ、紬ちゃんはわたしの部屋に来て、着替えを選びましょ! さ、ほらほら!」


「で、でも、もう帰らないと……」


「大丈夫ですよ。連絡入れます。それに愚息が共にいるので問題もないでしょう。ああ、ご安心を、ちゃんと紬ちゃんを部屋まで送り届けますので」


「そ、そういう問題ではないと思うのですが……っ!


「さー、選びましょ! 紬ちゃんに似合うものをちゃんと選んであげる! 下着はわたしはまだ使っていない新品のもがいくつかまだあるからそれを使ってね! 服の上から見た感じ、サイズ的には大丈夫だと思うし!」



 そうして、わたしは強制的に林さんのお宅でお風呂に入れてもらうこととなったのだった。

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