第11話
辿り着いたのは一軒家。車を車庫に入れた林さんは私をエスコートするからと言って助手席に乗せたまま一度外に出て扉を開けてくれる。申し訳なさがいっぱいな気持ちになりながら行動に甘えてそろそろと車を降りる。
そのまま林さんが案内をするように私の前を歩いて玄関前までたどり着いた。
と、中から扉が開いて、女の人がひょこりと現れる。
「………?」
正直、娘さんですか? と聞きたかった。そのくらいに、その人は若々しかった。
「ああ、今帰ったよ、ハニー」
「……………!?」
「おかえりなさい、ダーリン! そっちの子が連絡をくれた子かしら?」
「そうだよ。さ、おもてなしの準備をしなければね?」
「任せてちょうだい! さぁお嬢さん、入って入って!」
「…………、? !? ……???」
頭が混乱してしまい、何度も二人を見比べてしまう。そんな私の行動に二人はにっこりと微笑んだまま特に怒ることもなく、見守ってくれている。さぁさぁ、とついに手引っ張られて私はお邪魔することになったのだった。
「大体はああいう反応されるけれど、あんまりにも反応が極端だったから、面白くって」
「その……本当に、申し訳ありませんでした………っ!!」
「いいのよ〜、気にしないで〜。こっちも気にしてないんだから、ね?」
「で、でも……」
人の見た目で色々と判断するのは失礼すぎる行為であり、それをしてしまった自分になんとも言えない感情を抱いてしまう。
そんな私の自己嫌悪を正しく理解した二人は、それでもあっさりとしたものだった。
「家内は美容関係の仕事をしていてね。実年齢よりもよほど若く見られるんだよ。だから、日向様の反応は別に失礼でもなんでもないんですよ」
「そうよ〜、むしろこんな可愛らしいお嬢さんにも通用するってわかったんだから、ちょっと嬉しいくらいよ!」
「けれどね、ハニー、あまりに若々しくされてしまったら、わたしが助兵衛爺になってしまうんだよ?」
「あら、わたしはダーリン一筋なんだから大丈夫よ! むしろ、もっと歳の差があると思わせたくなって来たもの!」
「全く……まぁ、家内はこういうちょっとお転婆お茶目な性格なんですよ」
ははは、と笑って私にそう言ってくれるけれど、二人は今、キッチンに立っていて、二人で並んで料理を作っている。仲のいい夫婦なんだなっていうのがよく分かって、少しだけ羨ましくなってしまった。
今の私には、どうしたって手に入らないものだったから、多分なおさらだったんだと思う。
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