第7話

お昼ごはんをいつも通り、莉子ちゃんと一緒に食べる。今日は流石に外食にしてくれると言って、会社を一旦出て二人で近くの公園に行った。途中、莉子ちゃんがコンビニでごはんを買って近くのベンチに座ってお互いに日常の会話をしていく。


 コンビニのおにぎりとお茶を買って食べている莉子ちゃんに申し訳ない気持ちになりながら、作ってきたお弁当のおかずを少し分けつつ、私は実は水筒を忘れたと話せばじゃあ一緒に飲もうと言って紙パックの小さなものだったのに私にも分けてくれた。


 そうして、莉子ちゃんと心休まる時間を過ごしていたのだけれど、突然割って入ってきた声に、私は自分でも表情が抜けていくのを自覚し、莉子ちゃんはあからさまに嫌そうな表情を出してしまう。



「あ、おねえちゃーん!!」


「…………」


「あーっ、莉子先輩も! お久しぶりでーす!」


「……ああ、まぁ、そうね。久しいわね」


「いまお昼ですか?」


「見てわからないの?」


「えー、だってもし間違ってたらなんか恥ずかしいじゃないですか!」


「その程度の間違いを恥ずかしいと言えるあんたは幸せ者ね。華」



 そう言って、莉子ちゃんがスッと立ち上がり、私の姿を隠すように間に立ってくれる。


 それに申し訳ない気持ちになりつつも、それに甘えてしまっている自分がどうしようもなく嫌で嫌で仕方がなくて。



「もう、莉子先輩って意地悪なんですね!」


「いつも通りでしょう。それよりもあんた大学はどうしたのよ」


「今日は、ちょっと体調が悪くて自主休講しまして!」


「…………ずいぶん元気そうに見えるけどね。要はサボりでしょう」


「あっ、ひどい言い方ー」


「それで? わざわざここまできたのには理由があるんでしょ? 何?」


「あ、そうでした! お姉ちゃん、翔さんに合わせて!」



 と、突然かけられた声に一瞬反応が遅れてしまい、私は少しだけ思考が停止してしまった。そして思う。これは、【お願い】という優しいものではなく、この子からの【命令】なのだと。


 そうであるならば、動かなければ。けれど、だからといってわかったわといってあげられないのも事実なのである。私は、朝比奈さんと同じマンションで同じ部屋に住んでいるとはいえ、彼の連絡先を知っているわけではない。まあ、あそこまで嫌われているのだから自分から聞くこともできないし、聞いてもただデータを圧迫するだけとなるのは目に見えているため、聞こうともしなかった。


 それがこんな形で後悔する羽目になるとは思わなかった。



「……ごめんなさい。私、朝比奈様の番号は知らないの……」


「は? 一応妻なのに知らないの?」


「……ええ」


「役立たず! あーもう、いいわ。自分でなんとかするし。翔さんにも言いつけてやる!」



 一瞬で態度が崩れた妹の華を見て、私は諦めを覚え、莉子ちゃんはさらに嫌悪感をあらわにする。

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