第6話

午後の業務も頑張るかとパソコンのロックを解除して、タスクをチェックしていく。



会議に向かった課長のお陰で午後は比較的顔を見なくて済んで助かった。





「終わっ、たあ」





今日中に終わらせてしまいたいタスクを完了すれば、定時から30分だけ過ぎていて思ったより時間掛からなかったなと片付けを始める。



金曜日だという事もあって残業をしてる人は少なくてオフィス内も静まり返っていて。





「お疲れ様でした。お先に失礼します」



「お疲れ。喧嘩はほどほどに」



「…善処します」





残っていた部長に声を掛ければ微笑ましいものを見るように窘められて、気まずくなりながらもなんとか返事を返してオフィスを後にした。




帰る、と一言薄情にも先に帰った奴に連絡を入れて鞄に携帯を放り込む。




自宅とは反対方向の電車に乗り込んで2駅。



すっかり歩き慣れた駅から徒歩5分のマンションに入ってキーケースにある自宅とは別の鍵を取り出す。




合鍵と言えば聞こえはいいけれど、そんなときめくようなものでもなくて。





「いちいちチャイム押すのだるいだろ。こっちだっていちいち解錠すんのもだるいし」





はじめて家を訪れた時そんな言葉と共に次からこれ使えと渡された、全くときめかない実用的な理由で渡された鍵。





まあ確かにいちいちチャイム押して開けてと言うのも面倒だけれど。



いつでも来ていいよだとかあたしが安心するような言葉を投げ掛けられなかったのだろうか。

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