第5話

「コンビニにしたの?」



「あんまりお腹空いてなかったから」



「そう」




お昼休み終了ギリギリに戻ってきた同期におかえりと声を掛けて、おやつに買っておいたチョコレートを1つお裾分けする。




安辺あべ俺にも頂戴」



「…なんでですか、嫌です」



「あ?ケチだな」



「ケチじゃないですけど?」



「じゃあいいじゃねえか」



「自分で買ってくださいよ」



「誰かさん達の企画書がやばくて糖分が足りてねんだよ」



「失礼過ぎる」






無遠慮に差し出された手のひらに叩きつけるようにチョコを置いて、出来が悪くてすみませんと嫌味を言い放つ。




「ほんとにな」




あたし達の出来が悪いと否定せずやれやれと言いたげな顔で肩を竦めて自分のデスクに戻っていく課長。





「見た?今の。腹立つんだけど」



「分かったからその般若みたいな顔どうにかして。怖い」



「舌打ちしそう」



「やめて」





腹立つと目を釣り上げていたら怖いからと同期に顔を逸らされて、渋々深呼吸をして苛立ちを抑え込む。





ーシチュー。シーザーサラダ。フォカッチャ





苛立ちを抑え込みながら夜ご飯に食べたいものを打ち込んで送信した。




暫くして了解と楽しそうなスタンプが返ってきたけどそれすらもムカついて、既読はつけずに携帯の画面を伏せた。

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