不救の楽園
連(むらじ)
上京状況上皇
主観的には死ぬほどつらい受験勉強を経て、はれものに触るように家族に迷惑をかけてようやく、東京の五反田のそばにキャンパスを構えるかなりランクの低い私大に入学することができた。あたしはかなり安心した。もっとランクの高い大学へ進むことができたほうがもちろんよかったわけだが、もともとやりたいこともないし、また、やりたいことが見つかって、その時に自分のやる気があれば、再度受験というのも悪くないだろうと思う。親はあたしがかわいいので、家賃満額と仕送りを含めて15万円の高額の仕送りをいただけることになった。あとは足りない分はバイトしなさいということで、友達ができたら、なにか割のよいアルバイトを紹介してもらおうなどと軽く考えていた。山形ののどかな、一人も友達のいなかった高校時代を思い出しつつ、あたしは母と入学式の会場にむかった。あたしは濃紺のリクルートスーツ、母はグレーのパンツスーツを着ていて、来賓と入学生に分けられて、式に参加した。本堂と呼ばれる建物の中には、500人はいて、退屈なスピーチが終わると母とあたしは正門で写真を撮った。あまり親子ずれの人はいなかったが、母は少し涙ぐんでいて、あたしも少し誇らしかった。母はあたしに何かあった時のためにと
3万円の入った封筒をくれた。山形へ帰る母に駅まで送ろうかと言ったが、母は別れがつらくなると言って、一人歩いて駅へむかった。あたしが見えなくなるまで振り返っては手を振っていた。あたしは大学のキャンパスをふらふらと歩きだした。
不救の楽園 連(むらじ) @muraji_00
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