10日目 電話

 この日、いつものようにラウンジでゆっくりして、部屋に帰って、またゆっくりしていると、追っかけ君から電話があった。


「もしもし加藤さん。竹田です」


「おお。竹田君。どうしたんだ?」


「明日、天使探しに野外パークまで行くんですけど、よければ一緒に行きませんか?」


「他に誰か来る?」

「いえ。今のところ僕だけです」


「なるほど。何時くらいから?」

「そうですね…朝の10時にホテルロビーで待ち合わせでどうです?」


「オッケー。行くよ」

「おお!ほんとですか? じゃあ明日の10時にまた」


「うん。ああ、ちょっと待って。何か持ち物とか要る?」


「いえ。特には。ただ歩くので飲み物はあった方がいいかもですね。あ、後暇つぶし用に、ゲームでも持ってきてください」


「了解」


 ということで、追っかけ君と野外パーク?に行くことになった。


 こうやって誰かと遊ぶ約束をして出かけるのも久々だ。天使探しなので厳密には遊びじゃないかもだが、楽しみである。


 ゲーム機とあとは、

 何を持っていこうかな…


 ──────


 次の日。おれは目覚ましに起こされることなく目を覚ました。


 朝の8時である。

 気持ちよく伸びをする。


 子供の頃を思い出す。

 子供の頃はこうやって約束をして、朝から遊ぶことが多々あった。


 服を着替えて、昨日の内に用意しておいたカバンを持って部屋を出る。


 ホテルのバイキングで朝食を食べて、そのままロビーに行く予定だ。


 カバンの中には、ペットボトルのお茶と財布と鍵と、ゲームも入っている。


 この前の買い物の帰り道、電気屋で買ったのだ。


 ──────


 サクッと朝食を済ませるためにバイキング食堂に入って、そのままパンを取る。


 今日は食パンにした。


 ホテルには山型も角型もどちらも置いてあるが、おれは山型よりも角型の食パンのしっとりしたものが好きだ。


 そして、全体がこんがり焼けた狐色になるまで焼く。


 焼いている間、バターやジャムを見る。

 いちごジャム、いちじくのジャム、ブドウジャム。色々ある。

 どれにしようか迷っている間に焼き上がってしまった。


 しばらく悩んだが、今日はいちじくのジャムにする。


 いちじくのジャムは、小学生の頃校外学習で農場に行った時、お土産にもらって以来好きだ。


 あれは美味しかった。


 パンとジャムを取ったら、次はコーヒーを取りに行く。


 おれは砂糖を1スティック分くらい入れたコーヒーが好きだ。


 コーヒーを淹れ終わり、次は席を探す。


 今日も混んでいたようだったが、席は割とすぐ見つかった。


 流石にパンコーナーの近くなどはいっぱいだったが、他は割と空いていた。


 席に座って、ジャムをつけたパンをひとくち。


 美味い。


 コーヒーも頂く。


 飲むために口を近づけると、コーヒーの香りで癒される。


 ゴクリとひと口飲むと、その苦味が口に広がって、心なしか目が覚めた気がする。



 そうしてしばらく食事を楽しみ、待ち合わせ場所であるロビーに向かった。


 ロビーのソファに座って、ゆっくりゲームでもしながら追っかけ君を待とうと思っていたのだが、ロビーは人でいっぱいで、とても席は空いていなかった。


 なので、人通りの邪魔にならないよう、壁際にもたれて待つ。

 追っかけ君が通りそうな場所の壁際である。


 とりあえず一息つこうと、おれはカバンから水筒を取り出した。


 それをグイッと飲んでいると、隣におれと同じく、人と待ち合わせしてそうな女性がいて、その彼女と目が合った。


 女性は目があってしまったので気まずそうに会釈して、おれもお茶を飲んだ後、ちらっと会釈した。

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