1日目② ゴロゴロ

 やりたいことは生まれてこの方見つからなかった。

 もちろん、毎日ゴロゴロ暮らしたいとか、ゲームをしたいとか、そういう短期的なやりたいことはあった。


 学校に行きたくないとか、仕事したくないとか、そういうやりたくないこともあった。


 ……そういう意味では、天国はその願いが叶ったことになるので、良かったのかもしれない。


 これまでと一緒。流されるまま。ゴロゴロ。


 そうしてゴロゴロしていたら、18時を過ぎた。思ったより疲れていたらしい。


 とりあえず食事に行くことにした。50階でビュッフェ。


 何があるか、楽しみだ。


 鍵を持って、静かな部屋の外に出る。


 鍵のカチャカチャという金属音が響いた。

 


 ──────


 席は自由だったので、食事に近めのところをとった。


 バイキングなんて久々だ。


 ふぐの唐揚げ、ピザ、うどん、回鍋肉、焼きそば、サラダ、寿司まである。


 何を取ろうか迷いつつも、


 春雨のサラダに、フライドポテト、ピザ一切れに、ステーキ、白ご飯を取った。


 とりあえずこれでいいかと思い、席に戻る。


 次はカレーを取ろうと思う。


 ご飯の横にあったのだが、但馬牛がたっぷり入っていて美味そうだったのだ。


 いやでも寿司も捨てがたいな。

 

 そんなことを考えながら、


 まずはピザを食べる。

 チーズのとろけるマルゲリータだ。


 個人的にバイキングのピザというのは、少し冷めてしまっていてイマイチな印象があったが、これは熱々で美味しそうだったので、思わず取ってしまった。


 予想通り熱々で、チーズが伸びる。

 すごい。伸びる。


 次にポテトをひとつまみ。


 カリカリの食感と、よく聞いた塩味が最高。


 これも美味い。


 その後、春雨のサラダを間に挟みつつ、ご飯、ステーキを食べた。


 ステーキには、フライドガーリックが乗り、その上に特製のステーキソースをかけてある。


 肉は柔らかく、ニンニクの旨みで箸が進んだ。


 ───


 満腹のお腹をさすりつつ、食事が終わったので、部屋に戻る。


 行きとは違い、階段を使って、49階に降りた。


 腹ごなしの散歩に丁度いいと思った。


 50階の賑わいを後ろに、階段を降りると、まず分かれ道。


【←4920〜 4901〜4920→】


 左に進む。

 やはり綺麗な案内板だ。


 シーンとした廊下は絨毯なので足音も響かない。


 この静かな感じも好きだった。


 しかしどこからか、人の声が聞こえてくる。


 これは子供の声だ。


 親と会話しているらしい。


 すると奥の曲がり角から子供が走って曲がってきた。

 

 その後を親も急いで追いかけてきて、おれに気づくと会釈して通り過ぎた。


 家族でホテル暮らしか、ただ単に旅行か。


 おれは、その後いくつか分かれ道を進んで、部屋の前についた。


 ガチャガチャと鍵を開けて部屋の中に入る。


 木の机と椅子、テレビにソファ。


 来た時と変わらないその光景に、おれはなんとなく安心感を覚えて、ソファに寝転がった。


 テレビをつけると、生前と似たような番組が流れる。

 ニュースにバラエティに。

 ここはあまり変わらないらしい。


 ただ、出演者の中に既に亡くなった方がいて、なんか変な感じだ。


 そしてチャンネル数が割と多い。

 30ぐらいある。

 BSなどはないようだから、それが統合されたのかもしれない。


 その後、1時間ほどテレビを見て、おれは風呂に行くために立ち上がった。


 まずは着替えを探さなければ。


 バスタオルは、大浴場の入り口でもらえるらしいからいいが、


 服は今着ているものしかないので、ホテルの清潔なベッドに、それで寝転がるのは抵抗があった。


 とりあえずクローゼットの中を開けてみるとビンゴ。


 その中に何着かサイズ別でパジャマがあった。

 綺麗に袋詰めされ、密閉されている。


 下着も同じようにあったが、どうするか迷った。


 何となく抵抗がある。


 とりあえずパジャマなどと一緒に、先ほど見つけたバックに入れて持っていくことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

天国ホテルでバカンスを 〜ホテルで優雅にスローライフ〜 日山 夕也 @hiyama5

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ