1日目③ 温泉

 おれが高校生の頃、近所に温泉施設があって、そこの岩盤浴によく行った。


 そこで漫画を読むのが、恒例の楽しみだった。


 恵まれた家庭環境だったと思う。


 そしてこのホテルの温泉施設も、それと大差ない。いや、それ以上だった。


 広い漫画の置かれた休憩所があり、さらには1フロア丸々岩盤浴場だった。


 脱衣所は広く、窮屈ではない。


 ロッカーはちゃんと鍵がかかるタイプ。

 天国なのに、鍵があるのが不思議だった。


 取り間違え防止のためだろうと思う。


 脱衣所から浴場に通じる扉を横に開くと、いい感じの熱気と湿気が、伝わってくる。


 そして、広い。

 とにかく奥に広い浴場だ。


 まさに大浴場。


 室内風呂から見える景色も良い。


 よく手入れされた、庭園のような感じで、鮮やかな緑が目に入った。


 洗い場も広く、全く混んでいない。


 シャワーは、押しボタン式でなく、無限に出るタイプだ。

 これもまた嬉しい。


 温度を確かめ、頭から浴びる。

 お湯が気持ちいい。


 シャンプーとボディソープは、ホテルオリジナルのなんとかエキス配合で、なんか良さそうだった。


 少なくとも香りは良かった。


 そして身体を洗い終えると、まずは内風呂に浸かる。


「熱っ」

 少し熱い。


 ホテルの内風呂って、少し熱いことが多い。


 でもこれがホテルって感じがしていい。


 なんとか我慢して肩まで浸かると、次第に慣れてきて、ポカポカと身体が暖まってくる。


 気持ちいい。疲れが癒やされる。


 生前の疲れが、綺麗さっぱり消えていくような気がした。


 ──────

 露天風呂にも入ろうと思っていたのだが、内風呂で十分あったまってしまったため、今日は出ることにした。


 明日も明後日も休みなんだ。

 また明日入ればいい。


 そんな清々しい気分だった。


 大浴場を出て、おれは部屋に戻る。


 その道中で、アイスの自動販売機を見つけた。


「懐かしいな」

 昔通っていた、スポーツクラブにも、これと似たものがあった。


 もちろんタダなので、買って、部屋に帰ることにした。


 部屋に戻り、アイスを食べ、寝室のベッドに寝転がる。


 まだ22時だ。


 テレビをつけ、それを見ながらゴロゴロする。


 最高に贅沢だ。

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