東京の夜空

第2話

 地上ゼロメートルから見上げた月は、青白く冷たい横顔をしていた。

 そんな月の温度よりも、今夜は地面の方が冷たいのかもしれない。

 地面に寝袋一枚で接している背中が、凍り付くように寒い。

 私の認識不足、寝袋ってもっと温かいものだと思っていた……。

 自分自身の決断の甘さに、開始二時間で後悔をしてる。

 寝袋の中から手を出して、スマホを確認した。

 通常運転、誰からの連絡もなし、何とも虚しい。

『元気にやってる?』とか、『そっちはどう?』くらいあってもいいのにな。

 それって誰から? ああ、そうだ。

 そんな親しい友達なんか、長いこといたことがなかった。

 友達がいたなら、こんな風に公園のベンチの影に潜り込んで怯えながら眠ることもなかったはずだもんね。

 助けて、なんて誰にも発せない自分のコミュニケーション能力の低さに、ほとほと嫌気がさす。

 東京の冬がこんなに寒いなんて知らなかったなあ。

 だって『東京はさ、雪はほとんど降らないし、零下にはならないんだよ』って、楽しそうに話してくれたでしょ?

 かじかむ手に息を吹きかけて、二時間ぶりにリダイヤルをタップする。


『おかけになった電話番号は現在使われておりません。番号をお確かめになって、もう一度おかけ直し下さい』


 何十回かけたって、同じガイダンスしか流れないのはわかっているのに、懲りもせずまたかけ直してしまうのだ。

 会いたい、早く会いたい、あなたの声が聞きたい。

 信じてる、信じてるから――。

 あなたはきっと何か事情があって、私に連絡できないだけのこと。

 あんなに優しい人だから、トラブルに巻き込まれてるのだと思う。


『君の家族になりたいんだ』


 その言葉を信じて、後いくつ不安な夜を過ごしたらいいの?

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