今宵、月あかりの下で

東 里胡

プロローグ

第1話

 あの日の月は、青白く、冷たい横顔をしていた。


 手を伸ばしても届くことのない、あの人ようだなと思った。

 

 信じてる、信じられない、信じたい、信じさせて。

 

 迷う心が叫び出さないように、ずっと唇を噛みこらえていた。

 それなのに――。

 突然降り注いだアルコールの飛沫や、空き缶が当たったおでこが痛かったせいじゃない。


「大丈夫ですか!?」


 かけられた声と差し伸べられた手が、沁みたせいだ。

 とうに限界を迎えたダムのように、せきを切った涙は、止め処なく溢れて、夜の公園に私の泣き声が響き渡った。

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