高校1年生⑫

「何してるんですか?」


「・・・・・・夜琉くん」


「お久しぶりですね」


夜琉くんが微笑む姿を直視するのは久しぶりすぎて、いつにも増してきらきらして見える。


「お、お久しぶりです」


「この方はあさひの友達ですか?」


夜琉くんは視線を私から隣の槇井くんに移して尋ねた。


「うん!槇井くんだよ」


夜琉くんに度々槇井くんのことは話していたため、「ああ、この方が」と納得したような顔をして槇井くんに自分の名を告げた。


「おれはD組の岳千寺 夜琉といいます。あさひがいつもお世話になっています」


「いえいえー」


え、どっちかっていうと私が槇井くんのお世話をしてる方だよね?


槇井くんもあっさり肯定してるけど、君は私にお世話してもらってる方だよね?


「夜琉くん違うよ!私が槇井くんのお世話をしてるの!そうだよね槇井くん!」


「勉強教えてあげてるよ?」


「それはそうだけど、私は毎日移動時間のたびに槇井くんを起こして連れて行ってあげたり、お弁当作ってあげたりしてるじゃん!」


「俺も羽野さんにお菓子あげてるよ?はいこれ」


「ちょっ…!」


またプリュッチェルを口に入れられ、「これでお互い様ってことで」となんかいいいようにまとめられたけど、納得いかない。


そんな思いでじーっと槇井くんを見ていたら、


「……2人とも、すごく仲がいいんだね」


いつもどおり優しい笑みを浮かべながらそう言った夜琉くんだったけど、心なしか少しだけその笑みがぎこちなく感じる。


「私が一番仲良くて好きな異性は夜琉くんだからね!」


念のため槇井くんとの関係を誤解されないようにそう言ったが、夜琉くんは


「クラスで仲のいい友人ができたようで安心しました。これからもあさひと仲良くしてくださいね」


それでは、と言って去ってしまった。


夜琉くんは私と仲がいい異性がいたからってなんとも思わない。


それは前から分かってたことだし、その事実に今更落ち込んだりがっかりすることもない。


以前、夜琉くんに槇井くんのことを話していた時も、「友達ができたようで安心しました」とか「あさひよりも手のかかる人がいるんですね」とか、そんな反応だったし。


嫉妬してほしいとか、気になってほしいとか、そんなことじゃないけれど。


初めて出会ってから7年。


夜琉くんが私のことをどう思っているのか、私にはわからない。

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