高校1年生⑪
3ヵ月後。
学校生活にも慣れ、クラスでも友達が少しずつできはじめた。
授業は相変わらず難しいけど、なんとか付いていけている。
ただ……
「夜琉くん不足で死にそう……」
机に突っ伏した私は深いため息を吐いた。
ただでさえクラスが違うため会える時間が限られているというのに、放課後はほとんど毎日私はバイトで、夜琉くんは生徒会の仕事で忙しい。
唯一会えていた昼休みの時間は、中庭で食べるにはだんだん暑さが厳しくなり、2週間ほど前から涼しくなる時期まではそれぞれ別で食べることになった。
そんなこんなで、夜琉くんとは最近まともに喋れていない。
「はぁー……。夜琉くん、今何してるのかな……」
「そんなに気になるなら会いに行けば?」
隣でお菓子を食べている槇井くんが私に言う。
「何回か行ってるんだけど、いつも私が行くときに限って教室にいないんだよ・・・」
ほんとにタイミングが悪い。
一瞬避けられてる?と思ったこともあったけど、たまたま廊下で見かけた時は私に手を振ってくれたし、避けられているわけではなさそう。
「羽野さんとその人って恋人なの?」
「残念ながら、そういう関係ではありません……」
「じゃあ友達?」
「うーん、友達とも少し違うというか……」
現状、私と夜琉は恋人ではないし、かといって婚約者ってわけでもない。
小さい頃、夜琉くんが欲しいと言ってから交友が続いているけど、私が一方的に夜琉くんにアタックしてるだけだし、友達とも違う気がする。
「じゃあ、ただの知り合い?」
「……そんなところです」
夜琉くんの言葉であらためて悲しい事実に打ちのめされる。
「ただの知り合いなのに会えないのがそんなに辛いの?」
「・・・・・・はい」
「ふーん。変わってるね」
「・・・・・・槇井くん、私今とても落ち込んでいるのですが」
「そう」
「少しは慰めようとか思わないの・・・・・・?」
机に突っ伏していた顔を槇井くんの方に向ける。
「あ、ごめん。はい、これあげる」
まったく申し訳なくなさそうに、槇井くんはお菓子を私の口に入れた。
スティック状で中にチョコレートが入っているプリュッチェル。
久々に食べたけど美味しい。でもこんなんで私は絆されないからね。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
ていうか、プリュッチェルくれすぎじゃない?
さっきから1本食べる度にまた1本口に入れられるんだけど。
なにこれ。
まあ美味しいから遠慮なく貰うけど。
プリュッチェルを入れられるのが5本目となりかけたとき、
「あさひ」
私の癒しボイスが頭上から聞こえた。
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