高校1年生⑧
次の日。
先生から槇井さんを補習に出席させるという任務を授かった私は、とりあえず誰が槇井さんなのか調べる必要があった。
クラスメイトの誰かに聞こうかとも思ったけど、もし万が一聞いた相手が本人だった場合、かなり失礼になる。
授業中に先生が生徒の名前呼ぶ時あるし、それで確認するしかないか。先生が槇井さんを指名するかは運だけど。なんてことを考えていたけれど、
「おい槇井!寝てないでちゃんと授業を聞け!」
「いたっ・・・え、なに・・・?」
先生に教科書で頭を叩かれ、伏せていた体を起こした彼は、まだ少し眠気差がまだ混じったような声をしている。
「槇井、教科書は?」
「教科書・・・ないです」
「ないですってお前なぁ・・・。ったく、それじゃあ隣りの席の羽野に見せてもらえ」
「はい・・・じゃあそういうわけで、羽野さん。教科書見せてください」
「あ、うん!」
私は机を左隣の彼の方に近づけ、教科書を真ん中に広げる。入学式のテストの前に、1度だけ会話をした隣の席の彼が槇井さんだった。
思っていた以上に近くにいてびっくり。
クラスに友達がいない私が言うのもなんだが、彼も誰かと会話をしているところを見たことがない。ていうか、隣を見るといつも机に顔を伏せていて寝ている気がする。
「って、槇井くん!寝ちゃダメだよ!」
気づけば目を閉じて頭が下を向いている槇井くんに、小さい声で注意すると、「んっ」となんとか目を開いた槇井くん。
この人、大丈夫かな・・・。
その後も何度か彼は眠りそうになり、その度に私が起こす、というのをくり返し、ようやく授業が終わるチャイムが鳴った。
「あのね、今日の放課後に補習あるから、槇井くんもちゃんと来るようにって先生が言ってたよ」
授業が終わり、先生からの伝言を伝える。
「補習?」
「そう。入学式の日に受けたテストで70点以下の人は補習を受けて、再テストなんだって」
「ふ〜ん、そうなんだ」
大きな欠伸をしながら、「ていうか、テストなんてやったっけ?」と、眠たそうな目の彼。
「やったよ!入学式終わった直後にやったじゃん!テスト用紙返ってきたでしょ?」
「んー……、あ、あった」
彼の机の中から出てきたその答案用紙には、0点の文字が大きく書かれていた。
うっわ〜。
0点なんて取ってる人初めて見た。
ある意味すごい。
いや、待って、これって……。
「なんで、なにも書いてないの?」
彼の答案用紙には、1問も答えた跡がなく、唯一名前だけが記入されていた。
「さあ。多分、眠かったんじゃない?」
自分のことなのに、他人事のような槇井くん。
「眠いって……槇井くんいつも寝てない?」
「うん、まあそうかも」
といいつつ、また机に突っ伏してしまった。
なんか槇井くんって、
すっっごい猫みたい!!
ちょっとつり目なとことか、顔がちっちゃいとことか、なによりこのマイペースさ!
猫好きの私としては、なんか可愛いと思ってしまう。
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