高校1年生③

「……ねえ、なんでみんな勉強してんの?」


ふと頭上から聞こえた声に顔を上げると、ふわあと欠伸をして眠たそうな男子生徒。


「さあ……私も分かんない」


自分から聞いてきたくせに、どうでもよさそうに「ふーん」とだけ言って、男子生徒はそのまま私の左隣の席に座り、机に突っ伏した。


もしかして…寝た?なんかマイペースな人だなあ。


でもこの現状に疑問を持っているのが少なくとも私だけじゃなくて良かった。


それから数十分後、教室に先生が入ってきて、


「みんな揃ったかー?ぞれじゃあ式が始まるから名前順に廊下に整列するように」


その言葉に、みんな勉強道具をしまい、ぞろぞろと廊下に出る。


入学式の最中は、校長先生や来賓の長い挨拶に危うく寝そうになってしまったが、新入生代表挨拶で夜琉くんが出てきたことで一気に目が覚めた。


それは私だけじゃなく、みんな夜琉くんが壇上に上がった瞬間、『誰あの美青年!』、『岳千寺って、あの日本最大の財閥グループの!?』とざわざわしていたが、


夜琉くんが話し始めると、みんな話をやめて夜琉くんに釘付けになり、最後には今日一番の大きい拍手に包まれていた。


夜琉くんの姿を一瞬でも見ることができて、気分が良いまま教室に戻ると、三度目の不幸がやってきた。


「それじゃあテストを始めるから筆記用具以外はしまうように」


先生のその言葉に、私の頭はWhat?状態。


え、入学式にテスト?


聞いてないんですけども。


え、だからみんな勉強してたの?


困惑したまま前の席の人から回ってきたテスト用紙を受け取り、とりあえずざっと問題に目を通す。


……あ、でも割とこれいけるかも。


いざ解いてみると、問題の大半は入試の際に勉強した範囲だったため、答えを埋められなかった箇所は数個程度しかなかった。


間違いもいくつかあることを考えると―――おそらく60点ぐらいは取れてるだろう。


夜琉くんと同じ学校に通うために、中学生の頃毎日必死に勉強していたかいがあった。


グッジョッブ、過去の私!

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