9. 旅の終わりとお守り

旅の終わりとお守り

いよいよ修学旅行も3日目となり、私たち3人は今日一日の過ごし方についての話し合いをしていた。


「今日だけど、二人はどこか行きたいところとかある?」

「私は着物や伝統工芸品が売られているお店に行ってみたいわ。」

「いいね~、私も行きたい!」

「あ、私、ちょっと神社に行きたいんだけど寄ってもいいかな?」

「神社?行くのはいいけど、何かあるの?」

「……お守りを、買おうと思って。」

「お守り?……って、お守り⁉ もしかして水季みずき、誰かにあげるの⁉」

「うん。灯野ひのにもらったから、お返ししようと思って。」

「えっ、灯野くんにもらったの⁉」

「うん。といっても、意味を勘違いしてたみたいだったから、告白とかじゃないんだけどね。」

「そうだったんだ……!」

「それで、水季はお返しがしたいと思ったのね。」

「うん。灯野がお守りをくれた意味が、私にとっては嬉しいものだったから。」

「そうなのね。……ふふ、行きでは『もらうわけない』なんて言ってたのにね。」

「あっ、そうだよ水季!私たちの言った通りだったでしょ?」

「……うん、まさか本当にもらうとは思わなかったよ。」

「ふふ、水季が嬉しそうで良かったわ。」

「ね~!じゃあ、お守り探しに近くの神社に行ってみよっか。」

「うん、ありがとう。」


その後、無事にお守りを手に入れ、京子きょうこが提案してくれたお店を見て回った。そしてその後は、光梨ひかりの提案で抹茶のわらびもちパフェが美味しいと噂のカフェでお茶をすることになった。


「さっき行ったお店、どれも綺麗なものばっかりだったね!おかげでお土産が増えちゃった……!」

「うん、さすが京都って感じ。……それにしても……。」

「……買い過ぎたわ。」

「あはは、京子、お店の中でも目がずっとキラキラしてたもんね。」

「うぅ……私、和風のものに目がなくて……。この修学旅行中ずっと、興奮しないように抑えるので必死だったわ……。」

「でも、京子がそんなに和風のものが好きだったなんて知らなかったな。」

「ね、私も!でも言われてみれば、京子の持ち物って結構和風な感じの物が多いよね。」

「そうね、好きだから選びやすいっていうのもあると思うけれど、やっぱり大きいのは私の家柄の影響かしら。」

「あ~!そういえば、お家が平屋で庭園があったりして、すごく和の色が強いって前に言ってたね。」

「ええ。それに、家族全員和風な物が好きだから、自然とそんな感じの物ばかり増えていくの。」

「へぇ~。じゃあ、今回京子が買ったお土産はすごく喜んでもらえそうだね。」

「ええ、きっとそうね。」

『お待たせしました、抹茶わらびもちパフェでございます。』

「わ、ありがとうございます。」

私たちはお喋りを一時中断し、目の前の幸せを堪能した。



「……はぁ~。お土産もたくさん買えたし、パフェは美味しかったし、大満足の修学旅行だったよ……!」

「そうだね。みんなで色んなところに行けたのも楽しかったな。」

「ねぇ~!京子はどう?良い思い出にはなった?」

「ええ。きっと一生忘れない、とても良い思い出になったわ。これも二人のおかげよ、本当にありがとう。」

「「こちらこそ!」」




新しい場所に行って、新しい体験をして、友達の新しい面を知れて。

色々あったけど、本当に楽しかったな。


旅が終わるのは少し寂しいけど、私たちの人生はこれで終わりじゃないもんね。


買ったお土産を早くお姉ちゃんたちに渡したいし、部屋にも飾ってみたいし、……灯野にも、ちゃんとお返しがしたい。


お守りを渡したら、どんな顔するかな?

渡す時のことを考えるとちょっと恥ずかしいけど、やっぱりあの時もらった嬉しさを伝えたいから。



修学旅行に来てよかった、心からそう思った。

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