意味とおそろい

その後お店の中を見ていると、なにやらかわいらしい物が多く並ぶ棚の前で真剣に悩んでいる灯野ひのを見つけた。

「灯野、そんな真剣な顔してどうしたの?」

「ああいや、姉ちゃんの土産どれにすっかなと思ってな。」

「あ、小春こはるさんの選んでたんだ。」

「まあな。」

灯野には灯野ひの 小春こはるというお姉さんがいる。私の姉と昔から仲が良いため、私もよく遊んでもらった記憶がある。


「……あ、そうだ。」

「?」

「頼む、姉ちゃんの土産、一緒に選んでくれねぇか?」

「え、私も選んでいいの?」

「ああ、さっきから悩んでんだけど、どれがいいのか全然分かんねぇからさ。むしろ選んでくれると助かる。」

「わかった。じゃあ一緒に見よっか。」


「……あ、これとかどう?」

「ボールペン?」

「うん。小春さん大学生だから字を書くことも多いだろうし、柄も京都らしくてかわいいからお土産にいいと思う。」

「確かにな。……よし、じゃあこれにするわ。ありがとな。」

「うん。……あ、じゃあ、私のお姉ちゃんのお土産、それの色違いにしようかな?」

泉澄いずみ姉ちゃんの?」

「うん、おそろいであげたら喜ぶんじゃないかな。」

「いいな、そうしようぜ。」

「うん。」

私と灯野は、それぞれ色違いのボールペンをカゴに入れた。


「……。」

「? どうしたんだよ。」

「……なんかはたから見たら、私たちがおそろいのボールペン買った、みたいになってない?」

「……確かに。」

異様な状況に、2人で笑ってしまった。


「……凍ノ瀬いのせは、あと何か買うのか?」

「え?うん、自分用にあと一つくらい買おうかなと思ってるけど……。」



「じゃあさ、俺たちもおそろいで何か買わねぇ?」



「えっ、」


あまりの衝撃に、すぐには声が出なかった。

私と灯野が、おそろいの物を買う……!?


「ほら、昨日お守り渡しただろ?でも、具体的にどうやったら仲良くなれるのかとか、よく分かんねぇからさ。」

「……つまり、何かおそろいの物でも持っておけば、手っ取り早く仲良くなれるんじゃないかってこと?」

「そうだな。」


……なんて言うか、灯野らしいな。

お守りの意味を間違えて渡したり、何気なくおそろいの提案をしてきたり。

灯野といると、驚いてばかりな気がする。



でもそれが、どうしようもなく楽しいから。



「……いいよ、買おっか。」

「なら買う物決めようぜ。凍ノ瀬はどれがいい?」

「うーん、どれがいいかって言われると悩むけど……とりあえず、部屋に飾れるのがいいかな。」

「部屋に飾るのか?」

「うん。……絶対になくしたくないから、持ち運ばずに家に置いときたいなって思って。」

「……そうだな。なら、飾れるのにするか。」

「うん。…………あ、灯野、あれ。」


店内を見渡した時に目に入ってきたのは、小さなガラス細工だった。

動物や花、食べ物などたくさんの種類があり、どれも丁寧に作られている。

「おぉ、こんなのあるんだな。」

「うん、これならそんなに場所も取らずに飾れるし、何よりすごくかわいい。」

「だな。」

「う~ん、どれにしようかなぁ……。あ、灯野が買うことも考えなきゃだよね。」

「俺のことは気にせず選んでいいぞ。」

「そう?……あ、じゃあこれは?」

「それは……傘か?」

「うん。ここ見てみてよ。」

「……お、太陽が描いてあるな。」

「雨が降る時に差す傘に、太陽のマークが入ってるってなんか面白いよね。」

「そうだな。」

「それに、色もいっぱいあるから、色違いで持てるよ。」

「ほんとだな、それにするか。」

「うん。色はどれがいい?」

「俺は赤がいいかな。」

「じゃあ私は水色にしようかな。……小さいから無くさないようにね?」

「おう、任せとけ。」


こうして、私たちは無事におそろいの物を購入することができた。



おそろいの物を買ったからってすぐに仲良くなれるとは限らないけど、少なくともこの傘とお守りは、私にとってすごく大切なものになったと思う。


この2つを、思い出と一緒に大切にしていきたいな。

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