不安とジンクス

「なあ晴人はるひと、お守りが余ってんだけど、一ついらないか?」

「お守り?」

バスでの移動中、隣の席の新名にいな 湊斗みなとがよく分からない提案をしてきた。


「そ、これから仲良くなりたいと思う異性に渡すと、もっと仲良くなれるっていうジンクスがあるお守り。」

「ジンクス。」

「でも、ちょっと買いすぎちゃって、結構余ってんだよね~。」

「へぇ。」

「だから、もらってくれたら嬉しいんだけど。……晴人にもいるだろ?これから仲良くなりたい女子。」

「……。」


余るほど買うってことは、湊斗にはそんなに仲良くなりたい女子がいるのか?と思ったが、なんとなく聞くのはやめておいた。


それよりも。

これから仲良くなりたい女子……か……。


そりゃいないこともないが……かといってこれを渡すのは、そうとう恥ずくないか?「渡すだけで仲良くなれる」と言えば聞こえはいいが、裏を返せば渡すことは仲良くなりたいと伝えることと同じになるわけで。


……でも、お守りを渡すくらいしないと、今さら仲良くなるなんてムリかもな。


「……余ってんなら、もらうかな。」

「サンキュー晴人、助かるよ。」

「いや、俺の方こそありがとな。」



また仲良くなれんなら、渡してみてもいいかもしれない。




……凍ノ瀬いのせはこれをあげたら、どんな顔すんだろうな。

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