不安とジンクス

今日は、修学旅行の1日目。

幸いにも天気は晴れ。雨が降らなくてよかった。


「ねえ、先輩から聞いたんだけど、この修学旅行中に買ったお守りにはジンクスがあるんだって!」

「ジンクス?」


行きの新幹線の中で、光梨ひかりが目を輝かせて話し始めた。

「そう!なんでも、そのお守りを好きな人に渡すと、恋が叶うって噂らしいよ……!」

「へぇ~。」

「あ、すごい興味なさそう。」

「だって、今別に好きな人とかいないし……。」

水季みずきは渡さないかもだけど、誰かからもらうかもしれないよ!」

「そんなのないない。」

「え~、ないとは言い切れないと思うけどなぁ。ね、京子きょうこ!」

「……そうね、もらう確率が0とは限らないわ。」

「……なんか、京子が言うと重みが違う気がする……。」

「あっ……!ごめんね京子、変な話しちゃって……!」

「ううん、気にしないで。光梨は何も悪くないわ。」

「そう……?」


京子は美人であるため、よく異性から好意を寄せられている。

そのせいで、中学時代はだいぶ苦労してきたらしい。


「ふふ、ほんとに気にしないで大丈夫よ。それより、もらわない確証はないのだから、水季はもう少し意識しておいた方がいいかもしれないわね。」

「そうかなぁ……?」

「そうだよ!……まあ、期待しすぎもよくない気がするから、ほどよく意識してたらいいんじゃない?」

「そうだね……って、これ光梨にも言えるからね?」

「いやいや、私に限ってそんなことは……。」

「ちょっと、私にはああ言っといて、光梨はそんなこと言ってていいの?」

「うぅ……だって、ほんとにそう思うし……。」

「そんなことないって、光梨はすごくかわいいんだから。ね、京子!」

「ええ、そうね。変な男が寄り付かないか心配だわ。」

「ええ⁉ そんな、寄り付かないって!」


修学旅行という非日常の中でも、いつもと同じ友達と楽しく話していられるのは、なんだかとても安心する。


ジンクスを利用して、普段はなかなか伝えられない自分の想いを勇気を出して伝える人もいるのだろうか。



……その人たちにエールを送るだけでいいかな、なんて思ったことは二人には内緒にしておこうっと。

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