第6話

「なあ、かえでって藤宮ふじみやさんのことが好きなんだよな?」

「……えっ⁉あ、あおい、どうして、それを……!?」

「見てれば分かるよ。まぁ、本人が気づいてるかどうかは分からないけど。」

「そ、そうなの……!?」

「うん、楓は分かりやすいからね。……なんで好きになったのか、聞いてもいい?」

「えっ⁉……えっと……どうして、そんなことを聞くの?」

「……単純に気になったから、かな。藤宮さんといる時の楓がすごく幸せそうに見えるから、どんな想いを持ってるのかなって。」

「……えっと……僕が藤宮さんを好きになったのは……。」


俺からの問いかけに答えようとした楓の顔は、今まで見たことがないくらいに赤くなっていった。その顔を見るだけで、楓がどれだけ藤宮さんのことが好きなのか、思い知らされる。


……もう見たくない、この先を聞きたくない、と思ってしまった。楓の想いを聞けば、諦めがつくかもしれないと思って聞いたが、完全に逆効果だった。



ただひたすらに、胸が痛んだ。



「……もういいよ。」

「え?」

「楓の想いは十分伝わった。……そんなに好きなんだな。」

「……うん。」

「そっか……急にこんな話して悪かったな。藤宮さんとのこと、応援してる。」

「……!う、うん。……ありがとう、蒼。」

俺の言葉を聞いた楓は、とても嬉しそうに笑った。




あの日から、ずっと痛い。

あの表情を向けられるのが、俺だったら良かったのに。




……なんてことを考えても、現実は変わらない。楓は藤宮さんが好きで、俺を好きになることなんてありえないんだから。


あの時、応援していると伝えられてよかった。

楓には幸せになってほしい、そう、思うから。


だから、これでいいんだ。

この想いは、一生俺の心の中にしまっておけばいい。





例えそれが、初めて気づけた恋心だとしても。

俺は楓が幸せになれるなら、それで構わない。

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