第十章 楓の想い

55話

第55話

(……この間、玲子先輩の家に泊まった時に、玲子先輩、宏雪の事を

 言われたんだけど。今は……)


 楓は、自分の部屋で考えていた。そこに楓のお母さんがやって来た。


「楓、ジュースを飲むでしょう」


「お母さん、何か話があって、来たんでしょう? 話がある時は、

 いつも、ジュースを部屋まで持って来てくれるからね」


 楓は座り込む。楓のお母さんは、ばれたかと顔をした。


「えへへ、ばれましたか。楓」


「お母さんの娘だもの。それぐらい、分かるよ」


 楓は大笑いをした。楓のお母さんは、ジュースをテーブルに置き、

 楓の前に座った。


「どうしたの? お母さん」


 楓は不思議そうに、楓のお母さんに問いかけた。


 楓のお母さんは、ジュースを一口、飲んだ。


「ねぇ、楓、駿君と何かあったの? この頃、迎えにこないから。

 前は、夕食を一緒に食べたりして、仲が良かったのになぁと思って」


 楓は、寂しそうな顔しながら。


「……あのね、あのさ、言いにくいだけど」


「どうかしたの? 楓」


 楓のお母さんは、『何かあったな』と顔をした。楓は、黙ったまま。


 楓のお母さんは、楓の頭を撫ぜている。楓は自然に涙が出て来る。

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