54話

第54話

「私は、私は! 宏雪が好きだったの。小さい時から。

 でも、宏雪は、気が付かなかったし恋愛に興味がなかったでしょ。

 本当は、宏雪に今まで、好きな人がいなかったから。内心、安心していた。

 私は、皆から、『彼女』と言われて怒っていたけど、本当に嬉しかった。

 このまま、一緒にいられると思っていたし。でも、宏雪は違っていたの。

 ちゃんと、好きな人を見つけて、気持ちを伝えた。

 それは、宏雪にとっては、いい事だわ。でも、正直に言うと、寂しいなと

 思っているの」


「僕は、楓の事を……。玲子とは、小さい頃から、ずっと一緒だったし。

 兄弟みたいに思っている。だから、玲子の事は良い友達だと……。」

 困った顔する宏雪。玲子は、作り笑顔をしながら。


「だから、私も気持ちを伝えようと思っただけだから。別に、宏雪にどうこう

 してほしいと思ってないから。友達として、ちゃんとしておきたかったから。

 知っているわ。楓ちゃんでしょう」


「……分かった。ありがとう。ごめんな。玲子」

 

 宏雪は笑った。


「うん。じゃあね。宏雪」


 玲子は、去って行く。宏雪は、一人でたたずんでいる。

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