42話

第42話

急に、宏雪は、楓の前に立った。楓は、驚いて不思議な顔をした。


「楓、僕は君の事が好きかもしれない。ずっと前から、気になって

 いた。楓は知らないと思うけど、ずっと見ていた。今すぐ、返事を

 してほしいじゃないんだ。心に、留めてほしい。待っている」


「えっ、宏雪、私、今は……。でも、心の整理が出来てから、

 考えるよ。でない宏雪に悪いから。本当にありがとうね。ごめんね」


 楓は宏雪を見つめている。そんな楓を見た宏雪は、笑って。


「分かっているつもりから。楓、心配しないでいいから」


「うん、ありがとう。宏雪、何だか、眠たくなって来た」


 楓はあくびしながら、座り込んだ。宏雪も黙ったまま、座り込んだ。


 楓はこっくり、こっくりと寝てしまった。宏雪は、それを見て笑っている。


 だんだん、楓は宏雪の肩に、もたれかかっている。


 楓の瞳から涙が流れている。宏雪は、楓の頭を膝に寝かせた。


 そして、黙って空を見上げた。二人は、一晩、一緒に過ごした。

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