41話

第41話

「痛~い。あ~あ、閉められたよ。宏雪」


 楓は、起き上がった。


「いいじゃないか。一晩、過ごそうよ。

 楓が言ったんだよ」


「あっ、そうか、暗くなるよ。宏雪」


 楓は、空を見上げている。二人は、空を見上げて

 時を過ごした。空が、真っ暗になった。


「楓、ほら、星がいっぱいだろう。見ろ、奇麗だな」


 宏雪は楓の顔を見た。振り向いた楓は、

 お腹を両手で抑えた。


「うわぁ、うん、奇麗だね。でも、何か、お腹が

 空かない? ねぇ、宏雪」


「そうだね。腹、減ったな」


 宏雪はサンドウィッチ二袋と缶のお茶二つを取り、

 それぞれ一ずつ、楓に渡した。


「宏雪、ありがとう」


 楓はそれを受け取り、サンドウィッチのビニール包装紙を開けた。


 そして、楓は一つ、サンドウィッチを取り、口にほうり込んだ。


「う~ん、おいし~い。星を見ながら、食べるのって、いいね。

 しかも、久々に、こんなにたくさんの星が見るなんて」


 楓は屋上の手摺りに背を向けて、もたれた。


 宏雪は、サンドウィッチを食べながらそれを見て。


「そうかもしれない。それにしても、楓のお母さんが

 心配しているよ。きっと」


「心配しているんだろうな。宏雪、でも、帰りたくなかった。

 私の我が儘だと思う」


 楓はもう一つ、サンドウィッチを食べながら、空を見上げた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る