40話

第40話

「やっぱり、ここに居たか? どうしたのか? 昼休みから、

 ずっと、居たのか? 友達が探していたぞ。楓、帰らないのか」


「えっ、そんな時間? ぼっとしちゃって、時間を気が付かなかった。

 何だか、帰りたくないよ。一人になる涙が出てきて、余計な事を

 考えるから。それに、寝られないし。寝ても、夢にも出てきて、

 魘されて、真夜中に、起きてしまうし。『誰かに、側にいて

 ほしい』と思うぐらいに……。こんなじゃあ、駄目だよね?」


「よし、ここに泊まろうか? 一緒に。夜になる星が奇麗に

 見えるんだ。見ようか?」


 宏雪は楓の横に座った。楓は、驚いた様子で。


「えっ、宏雪は駄目よ。優等生なんだから。そんな事をしたら、

 先生達が驚くよ。私はいいんだけど」


「そんな事は、どうだっていい。楓が心配なんだよ」


 宏雪はカバンから、サンドウィッチ二袋と缶のお茶二つを出した。


「ごめんね。宏雪、それにしたって、食べ物は?」


 楓は謝った。宏雪は立って、屋上の手摺りにもたれた。


「夕食、朝食の分まで、買いだめしてしまった。

 今日、家は誰にもいないんだ。それに、楓が心配なんだ」


「宏雪、そうか、ありがとう。駿は、愛美ちゃんと仲良く

 しているよ。見ていると、辛くて、苦しくて、何か、

 私が側にいてはいけないと思うし、人の気持ちも考えろよと

 思う。心が複雑なんだ」


 楓は立って、屋上の手摺りにもたれた


「あっ、誰かが来る。楓、頭を下げろ」


 宏雪は楓の頭を思いっきり、手で下げた。


「うわぁ」


 楓はしりもちをついた。屋上のドアを開け、見渡す警備員。


「よし、誰もいないな」


 警備員は、屋上のドアを閉めた。そして、カギをかけた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る