37話

第37話

「どうしたの? 宏雪」


「……ん、あのさ、実は……。さっき、楓の家に心配になって、

 行って来たんだ。愛美ちゃんに、『駿と付き合っていますから。

 だから、別れて下さい』って、言われたらしい。それに、

 その事が学校中の噂になっている。玲子も知っているだろう?」


 宏雪はコーヒーを一口、飲んだ。玲子は、頷きながら。


「うん、知っているわよ。楓ちゃんの予感が当たったわね。

 女の勘って、鋭いから。楓ちゃんは、どうしたの?」


「泣いていたよ。ものすごくね。僕は、何も言えなかった。

 悔しいよ。情けないよ」


「……うん。そういう時は、黙って泣かせてあげて。

 そうすれば、ちょっと、すっきりするから」


 玲子は、何処か寂しそうな笑顔をした。


(……宏雪は、鈍いな。私は、宏雪が好きなのに。

 ずっと前から……。気が付かない奴。本当は、

 楓ちゃんを抱きしめているところを見た時は、

 ショックだった)


「あのさ、玲子。楓ちゃんに告白しようと思うんだ。

 僕、どう思う?」


 玲子の気持ちに気が付かない宏雪は、笑って聞く。


 玲子は、自分の気持ちを抑えようとしながら、笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る