29話

第29話

玲子は、コーヒーを飲みながら、宏雪に声を掛けた。


「今がチャンスよ。頑張ってね。宏雪」


「僕は、そんな気はないよ。人の弱っているところに

 付け込むなんてさ」


 宏雪はコーヒーを飲みながら、笑った。


(もし、楓ちゃんが、駿君に振れたら、僕にも……)

 

 二人は、コーヒーを飲みながら、くつろいでいた。

 

 もう一方の楓は、一人で、桜道を通りながら、行き交う人々を

 見ていた。突然、楓の瞳から涙が自然に溢れ落ちてくる。


(どうしてだろう。何故だろう。涙が、自然に溢れ落ちる)

 

 思いっきり、顔を下に向けながら、手で涙を拭いている。

 そして、一人で家路へと急いだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る