第三章 楓の渦巻く気持ち

26話

第26話

「楓、待てよ。一緒に帰ろう」


 駿は楓の後を追うように、教室から出た。

 楓は、カバンを持って、スタスタと歩いている。


「駿、もう、ついてこないで! 今日、宏雪さんと

 一緒に帰る約束なの!」


「そうか、楓」


 駿は黙ったまま、立ち止まった。楓は知らんふりをして、

 宏雪の教室へスタスタと歩いて行った。駿は、じっと、

 見つめている。


「あっ、そう、宏雪さんって、生徒会だったら

 どうしょう?」


 宏雪の教室に行った楓は、困った事に気が付いた。


「楓ちゃん、どうしたの?」


 玲子は、ポンと叩いた。後ろに振り返った楓。


「玲子先輩、宏雪さんに、用事があって来たん

 だけど……」


 楓は、悲しそうに笑った。


「もうすぐ、終わるわ。宏雪が帰ってくるまで、


 私も一緒にいるわ。さあ、中に入って宏雪の席に座って」


 玲子は、楓の肩を持って、誘導した。楓は、玲子と並んで

 歩いて行く。


「はい、玲子先輩」


 二人は、黙ったまま、時間だけが過ぎていく。

 そこに、宏雪が教室に戻って来た。


「あれ、どうしたの? 楓ちゃん」


 宏雪は驚いた顔で楓に聞く。楓は悲しそうな顔をする。


「宏雪さんに話があって来たんですが、良いですか? 玲子先輩も一緒に」


「良いよ。楓ちゃん、な、玲子」


「そうね、良いわよ。私の家の喫茶店は、どう?」


 玲子は笑って、楓を誘った。


「はい、良いです。玲子先輩、ありがとうございます」


 楓は会釈をした。宏雪は、笑った。

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