21話

第21話

「楓ちゃん、このまま、もう少し、いさせてくれないか」


 宏雪は、楓をきつく抱き締める。


「痛い。でも、宏雪さん、呼んでいるのに。女の人が来る

 のに! 駄目です」


「あっ、ひ、ろゆき」


 髪がワンレンで腰まで長い、モデル並の奇麗さの女生徒が

 驚いている。これが、楓と玲子の出会いだった。


「玲子、ごめん」


 宏雪は楓を抱いたまま。玲子は前髪を手で掻き上げながら、

 少し驚いた様子。


「良いわよ。ちょっと、驚いただけ」


 楓は、咄嗟に宏雪を突き飛ばして離れた。玲子の方に向いて、

 焦って両手で手を振った。


「違いますよ。宏雪さんって、彼女がいるじゃないですか。

 どうも、すみません。私にも彼氏がいるから」


「別に、良いのよ。彼女じゃないわよ。初めて、宏雪が女の子に

 興味を持つから。驚いただけなのよ。それに、私は幼なじみで、

 こんなに、良い女だっていうのにね」


 玲子は笑う。楓に突き飛ばされた宏雪は、困ったような顔をしながら

 も立った。


「づけっと言うなよ。何の用事だ?」

「そうなの。先生が、放課後に生徒会をするから。役員全員を集める

 ようにって」


 玲子は屋上の手摺りにもたれた。


「宏雪さん、さっきから、『玲子』って呼んでいるけど、誰ですか?」


 楓は、おそるおそると聞いた。

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