20話

第20話

「僕に言ったら、すっきりするかも」


「宏雪さん、本当は、不安で、不安で仕方ない。

 駿に内容を聞きたくて、でも、聞けないし、

 それに、聞いたらいけないような気がする。

 今まで、駿は隠し事や秘密など、私にはした事がなかった。

 愛美ちゃんに会ってから、変わったような気がする。それに、

 本当はね、不安だった。愛美ちゃんと初めて会った時から。

 あの桜道から、そんな悪い予感がしたんだ」


 楓は考え込んだ。


「そんな思いながら、我慢しているんだね。


 宏雪は楓の肩を優しくポンポンと叩く


「何か、切ないなぁ」


「そうかな。宏雪さん」


「楓ちゃん、そうだよ。そうやって、強がっているから」


 遠くから、宏雪を呼ぶ女の声がする。


「宏雪! 何処なの! いるんだったら、返事して!」


「宏雪さん、ねぇ、女の人が呼んでいるよ。

 行かなくてもいいの? じゃあ、行かないだったら、

 呼んでくる」


 楓は立って、呼びに行こうとしたら、宏雪が楓の手を引っ張り、

 自分の身体に寄せた。


 もう一方の楓は、何が起こったのか分からずに、宏雪に抱き

 締められているのを必死に抵抗し始めた。

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