17話
第17話
「誰も居ないな。一人で、食べるのも寂しいな」
男性の声が聞こえてくる。しかも、だんだん、声が、
楓の方に聞こえてきて、思わず、顔がほころぶ。
(……何だ。駿と違うじゃん。)
思いながら、がっくりとした。下に向いた楓に人影が
近づいてくる。
「楓ちゃん、どうした? 一人で弁当を食べているんだ。
駿君はどうした? いつも、二人でいるのに……」
宏雪は紙袋を片手に持っていた。
「あっ、宏雪さん、愛美ちゃんの相談にのっているらしいよ。
この頃、ずっと……。それより、宏雪さん、横に座って」
楓は優しく笑った。
「ああ、そうするよ」
宏雪は楓の横に座り、紙袋を横に置いた。紙袋の中から、
サンドウィッチを取り出した。楓は、それを見て聞いた。
「宏雪さんって、いつも、買うんですか? 誰か、お弁当を
作ってくれる人って、いないんですか?」
「いないんだ。お母さんは、弟の世話で忙しいし」
「宏雪さん、彼女がいるではないですか?」
楓は玉子焼きをほおばりながら、聞いた。
「彼女なんて、いないよ。それより、楓ちゃんのお弁当を、
お母さんに作るのか?」
宏雪はサンドウィッチのビニール包装紙を開けた。
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