13話

第13話

「そんなの甘いです。私だったら、駿先輩をかわいそう事は

 しません」


 愛美はきっぱり、言い切った。駿は、愛美の頬を思いっきり、

 パシーンと顔をひっぱたいた。


 愛美はよろめいてこけた。


「もう、やめて! 駿、暴力は駄目。最低!」


 楓は、愛美を起こしながら、自分のハンカチを差し出した。


「楓よ。悪口を言われたんだぞ。それでも、平気か。俺は、

 許せないんだよ」


「平気ではないけど、駿、だから言って、殴るのはよくない」


「よくない。でも、楓……」


「駿の気持ちはとても、嬉しいよ。分かっているけど……」

「もう、やめて下さい。分かりました。私が悪いんです。

 楓先輩達、ごめんなさい」


 愛美は、楓のハンカチで、頬を抑えている。楓は愛美の前に

 立ちはだかる。


「だからね、良いでしょう?」


「もう、知るか!」


 駿は、怒ってさっさと一人で、教室に戻った。


 それを見た愛美は、今にも泣きそうな声で言う。


「楓先輩、本当にごめんなさい。駿先輩を追いかけてあげて

 下さい。今すぐに!」


「もう、良いよ。いつもの事だから。気にしないで。頬を冷

 やしに行こう」


 楓は優しく笑った。


「でも……」


 愛美は申し訳なさそうな顔をした。

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