14話

第14話

「良いってば。後で機嫌を取るから。先に愛美ちゃんの方」


 楓は、愛美の背中を、両手で押して、水道まで連れて行った。


「どうも、すみません。楓先輩」


「もう気にしないで、痛かったでしょう。ごめんね。駿も、

 悪気がないから。きっと、私の事を思ってしてくれた事だから」


 楓は、水道で自分のハンカチを、濡らしている。


「はい、分かっています。うらやましいですね」


 愛美は、楓が濡らしてくれたハンカチを頬に当てた。


「そうかな」


 楓は、両手を洗っている。


「そうですよ。もう、良いですから。行って下さい。楓先輩、

 ハンカチ、借りますね」


「うん、分かった。愛美ちゃん、行くね」


 楓は手を振り走って教室に戻っていた。愛美は黙ったまま、


 手を振っている。


 楓が教室に戻ってみると、駿が机にもたれて、顔を横に向け、


 窓の外を見ている。


「駿、でも、嬉しかった。ありがとう」


 駿の横に行く楓。駿は、楓の顔の方を振り向いた。

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