12話

第12話

「宏雪さん、ありがとう。またね」


 楓は手を振りながら、二人の後を追うように走り出した。


 宏雪は、叫んだ。


「また、誰かにぶつかるよ。気をつけて、行きなよ」


「は~い」


 楓は手を振り走り去った。宏雪は、独り言を言いながら、

 笑っている。


「変な奴」


「どうした? 珍しく笑っているなって思っただけ」


 男友達が後ろから来て言った。宏雪は、後ろを向いた。


「そうか、変な女の子がいてさ。おもしろいなと思った」


「宏雪が、初めて女に興味を持った。玲子に怒られるぞ」


 男友達が笑った。


「そんなじゃない。女の子は彼がいるよ。行くぞ」


 宏雪は、教室へと歩いて行く。男友達も一緒に歩いて

 行った。


 一方の楓達は、ただならぬ雰囲気になっていた。


「楓先輩って、不思議な人ですね。駿先輩が何か、かわい

 そうです」


 急に、愛美が言い出した。


「そんなことはない。楓は、ちゃんとしてくれる人だ。ただ、

 子供っぽいところがあるだけ」


「駿、ごめんね。そうかな」


 楓はしゅんしょんぼりした。

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