11話

第11話

「どうした? 楓。何かを考えているような顔をして」


「ううん。何でもないよ。駿」


 楓は手を後ろで組んで、駿達の方を見ながら歩いている。


「楓先輩、危ないです。後ろに人がいるんです」


 愛美は、とっさに叫んだ。


 楓は、誰かにドンとぶつかって、よろめいた。後ろから、

 誰かがパッと支えた。


「楓ちゃん、また、君か」


「宏雪さん、ごめんね。ありがとう」


「宏雪先輩、どうも、すいません。楓が、また、悪いですよ。

 気をつけない奴だから」


「あっ、あの時の男の人ですか。なんて何と言う名前だったの

 か忘れたんです。私は、上月 愛美です」


 愛美は、宏雪を見て思い出した様子。


「僕は、柊宏雪。ここの三年生。だから、愛美ちゃん、君より

 二つ上だから」


 宏雪は、楓から離れ、優しく笑った。愛美は、笑って聞いた。


「はい、『柊先輩』って、呼んでも良いですか? 私の事を

『愛美』って呼んで下さい」


「宏雪先輩、俺達は、これで、教室に戻ります。楓、愛美

 ちゃん、行こうか」


 駿はゆっくり、会釈をして歩き出した。


「はい。柊先輩、では、また」


 愛美は、駿の後を追うように歩き出した。

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