10話
第10話
「あっ、良かった。本当に良かった。楓さんと駿さんに会えて。よろしく
お願いします。あっ、すみません。どうお呼びしたら良いかと。私は、
愛美でいいです」
愛美は、楓の手を握り返して、微笑んだ。
「『楓』と『駿』でいいよ。でも、嬉しい。どうしたの?」
「『楓先輩』と『駿先輩』って、お呼びするのは、恥ずかしいんですが。
実は、迷いました。一一ホームの教室に行きたいです」
「じゃあ、一緒に行こうか。俺達と」
「そうだね。行こうか。一緒にね」
「はい、そうですね」
三人は、お互いを見て笑った。
そして、歩き始めた。突然、愛美が。
「先輩達は、恋人同士ですか?」
「突然に何を言うの。ワッハッハ。そうだけど」
楓は赤面しながら、笑った。、駿は、楓の頭を撫ぜながら。
「うん。俺達は、付き合っているよ。もう、3年前から」
「そうですか。『あの時も、そうなのかなぁ』って、思いましたから。
『良いな』って羨ましく思いました」
何処か寂しそうに微笑んだ愛美。
楓は、そんな愛美の表情に、あの時に、ふっと思った事を思い出した。
不安を感じた。
(……ん、この嫌な予感は、何? なんでだろう。嵐のようなこの胸騒ぎ
は……。愛美ちゃんに、そういうふうな感情を持つなんて。まさかなぁ)
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