9話

第9話

二人は、そんな事を言いながら、入学式にのぞんでいる。しばらく経った。


 入学式が終わって、体育館からゾロゾロと生徒達が出て来てくる。


 ざわめく中、二人は教室へと歩いている。廊下に、一人で下に向いたまま、

 立っている女の子がいる。


「どうしたの? こんなところで」


 楓が近づいて行く。そろそろと、顔を覗いた。


「あっ、お久しぶり。ねぇ、駿、ねぇってば! 来て」

「どうしたんだ。楓」


「あのな、この間、『桜道』で、私とぶつかった女の子でしょ。そうだよね」


「えっ、あのう……」


 彼女は不安そうな顔をした。彼女は、上月 愛美。彼女は、髪はストレトで、

 はかなそうな身体にぽっちゃりした顔。今どきの子にはない清楚で可憐な

 女の子。


「え、愛美ちゃんだったっけ」


「はい! そうです。あっ、あの時の人達ですね。本当にすみませんでした」


「よかった。思い出してくれて」


 楓は、嬉しそうに愛美の手を握った。


「愛美ちゃんって、ここに入学したんだ。俺も楓もここの二年生なんだ。

 そしたら、後輩になるんだ」


 愛美に優しく微笑む駿。

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