第16話 高級ベッド、ロリ付き。

「電気消しますね」


「うん·····」


 天蓋付きの大きなベッドに、二人で寝っ転がる。


 こんな大きな·····しかもロリが普段使っているベッドに寝るだなんて、あっていいのだろうか。


 高級ベッド。ロリ付き。


 天国か?


 さっきから胸の鼓動がうるさい。なかなかない状況に興奮しつつも、緊張もしている。


 もちろんロリに手を出すようなクズは滅ぶべきだと思っているので、ただ寝るだけなのだが、ここまでドキドキしているとさすがに寝れないかも·····。


 今の時刻は10時半。


 ああ。なんて健康的なんだろう。


 早く寝るのは肌にいい、とよく言うけれど木乃花ちゃんを見ていると確かに理解できるかもしれない。


「結城さん、おやすみなさい」


「おやすみ、木乃花ちゃん」


 おやすみだなんて言ったけれど、寝られる自信など全くない。


 しばらく天井を見上げていた俺は、なんとなく木乃花ちゃんの方を向く。


 木乃花ちゃんは俺の方を向いて目を瞑っていた。


 そんな彼女の顔を、俺はマジマジと眺める。ロリとしては最高峰のかわいさを持つ彼女の顔は、永遠に見ていられる。


 そんな時、木乃花ちゃんがゆっくりと目を開いたために、僕たちは目と目が合ってしまう。


 そして木乃花ちゃんは、俺の顔を見てニッコリと微笑む。


「·····!!」


 ダメだこれ。脳が破壊される。耐えれるわけがない。


 アドレナリンが激しく出ているのを感じる。もう今日はオールして木乃花ちゃんの寝ている様子を見守るしかないかな。


「結城さん、眠れないんですか?」


 木乃花ちゃんが優しい声で話しかけてくれる。


「う、うん·····。いつもは12時に寝てるからさ」


 そう。まだ11時にもなっていない。そもそも寝れるわけもなく·····。


「じゃあ、私が寝させてあげます」


 木乃花ちゃんはそう言って起き上がり、ベッドにちょこんと座った。


「えっと、これは·····?」


「膝枕です。そしたら眠れるかなって·····」


「·····!?」


 ひざまくらっ·····! ロリの膝枕!


「遠慮しないで好きなだけ使ってください」


「え、あ、うん·····。じゃあ、失礼するね」


 遠慮しなくていいと言われたのだから、遠慮はしない。


 俺はそっと、木乃花ちゃんのスベスベでプニプニな太ももに頭を乗っける。


「ど、どうですか·····?」


「よく寝れそうだよ」


 いや、寝れるわけがない。


 だって俺は今ロリに膝枕されてるんだから! なにこれ。最高すぎないか?


 顔を上に向けると、木乃花ちゃんの顔を下から見上げる形になった。また目が合う。


 普段は俺が見上げられているのだが、今は立場が逆転しているのだ。


「下から見る木乃花ちゃんも可愛い·····」


「えっ·····!?」


 しまった。考えていたことがつい声に出てしまった。


「あ、いや·····これは、その·····」


 俺は慌てて否定しようとする。


「嬉しいです」


「·····?」


「これまで結城さんに、可愛いと言われたことがなかったので·····」


 ああそうか。俺は、木乃花ちゃんを可愛いと思うことを、ロリコンゆえの感情だと決めつけて抑え込んでいたんだ。


 女の子であるなら、可愛いの一言くらい言われたいものだろう。


「そ、そっか·····」


 なんか気まずいような、でも距離が縮まったような·····。少なくとも、今後は好きに可愛いと声に出してもいいってことだよね。


 俺は頭がショートしそうになって、放心状態になる。


 あー。


 なんで膝枕って言うんだろ。


 頭を乗せるのは太ももなのに。


 もっと膝の方で寝るべきなのかな。


 逆にもっと胴体の方で寝たら、なんて言うんだろうか·····。


 そして俺はそのまま眠ってしまう。



◇ ◆ ◇


 時計の針が11時を指した頃。


 木乃花は、自分の膝で眠った結城葵をしばらく眺めていた。


「結城さん、寝ましたか·····?」


 声をかけても一切反応がない。本当に寝てしまったらしい。


 木乃花は、葵を布団にそっと戻して、ベッドの側で寝ている様子を観察する。


 そして、木乃花と葵の顔の距離はどんどん近付いていた。


「んん·····」


「·····っ!?」


 葵が少し動いたことで、木乃花はビクッと反応する。


「ビックリした·····」


 木乃花は落ち着きを取り戻して、もう一度顔を近付ける。


 その顔は紅潮しており、目はキラキラと輝いている。胸の鼓動が激しく、この静かな部屋に音が鳴り響いてしまいそうなくらいだ。


 そのまま瞼をそっと閉じ、葵の頬に柔らかな唇をそっと近付ける。


 そして唇が肌に触れたのを感じ、目を開いて顔を離す。


 静かに自分の元いた場所に戻って布団に潜る。


 ドキドキが収まらなくて、顔を赤らめて、ぬいぐるみを抱きしめて、目を強く瞑りながら、木乃花は眠りについた。

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