第10話 同棲も同居も変わらない
土曜日。
ゲーム開発は休みになったとはいえ、俺は木乃花ちゃんの家に通うと決めていた。
一ヶ月間ロリに会えないのは、耐えられるわけがない。
一種の「ロリ中毒」と言うべきだろうか。
どうも感覚が麻痺してきたようで、なかなかに悲惨な状態である。
「おはよう、木乃花ちゃん」
「おはようございます、結城さん。今日は何をしますか?」
木乃花ちゃんはなんと、学校に友達がいない。
これだけのお金持ちだと、お金目当ての人が寄ってくることが多いらしく、友達はそれなりのお金持ちの少女に限られているのだと言う。
そんな中、初めてできた男友達の俺や裕也なんかは貴重な存在に違いない。
「この前から気になってたんだけど、木乃花ちゃんの部屋に行ってみたいなって」
「私の部屋ですか? もちろん大丈夫ですよ!」
俺は手を引かれて、エレベーターに乗り込む。そして、木乃花ちゃんが押した階はなんと最上階。一応、屋上を除いた話での最上階だ。
「木乃花ちゃんの部屋って最上階なの!?」
「見たらきっとビックリすると思いますよっ!」
「なんか緊張してきたぞ·····」
エレベーターが目的の階に着き、ドアが開かれる。俺は目の前の景色に目を見張り·····はしなかった。
そこには普通の廊下があった。そりゃそうだ。エレベーターと部屋が繋がっていたら、それはそれで問題であるのだが·····。
しかし、どこからどう見ても頑丈で立派な扉が、俺たちの前に立ちはだかっていた。他の階の部屋とは明らかに雰囲気が違う。
木乃花ちゃんがドアを開けるのを、俺は息を飲んで見守る。
その扉の先に広がっていた光景は、とんでもないものだった。
まず目に入ってくるのは、二階くらいの高さがある天井まで届くほどの、あまりにも大きな窓。そこからの絶景は文句なしの一級品。街を一望できるその景色は、どれだけ見ていても飽きなさそうだ。
デザイナーらしく装飾も完璧でとても居心地がいい。どのスペースも無駄がなく、かつきれいに整理されている。
また、二階へと続く大きくて白い階段があり、この部屋の広さを俺は思い知る。
これは決して家ではない。一人の少女の部屋なのだ。控えめに言って、これは段違いにやばい。
「どうですか? 私のお部屋は」
「最高だよ! もうここに住みたいくらいだ!」
本心である。こんなところに住めたらどれだけいいだろう。
「えへへ。じゃあ、一緒に住んじゃいます?」
「冗談は程々にした方がいいよ。木乃花ちゃん」
悪い大人はその一言で勘違いしちゃうんだ。軽い気持ちで言うべきではない。
「冗談ではありません。私一人にこの大きなお部屋は持て余してしまって·····。その、それに結構寂しいんですよ?」
「木乃花ちゃん·····!」
これではまるで、家に一人ぼっちの可哀想な少女そのものではないか。
俺は、自分の欲望のためではなく、彼女のために選択をしなければならない。
「一ヶ月だけだ。ゲーム作りを再開するまでの一ヶ月、ここで木乃花ちゃんと暮らす。それでいいか?」
「はい! 同棲みたいですね!」
「ど、どう·····!? 同居だ! 同居!」
俺は慌てて否定する。
いかにも自然にそんなことを言ってくるとは予想だにしなかった。
「あら、そうでしたか。違いが分からなくって·····」
「同棲は恋人同士のするものだ。同居とはまるで意味が違う」
「なるほど·····。でも、この場合同じようなものですけどね」
「·····?」
どういう意味だ?
「それはさておき、お部屋の案内をしましょう」
木乃花ちゃんは誤魔化すかのように、さっさと歩き出してしまう。
「ああ、よろしく頼む」
俺も木乃花ちゃんに付いていく。
今日からここで過ごすことになると思うと、なんとも緊張してくるものだな。
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