第8話 荒れる親睦会とロリの泣き顔

「「カンパーイ!」」


 四人で杯を交わし·····と言っても、もちろんお酒ではない。僕たちは、随分と立派なコップに注がれたリンゴジュースを飲む。


 壁に貼り付けられた紙には、子供らしい字で「親睦会」と書かれていて、風船や折り紙で作られた飾り付けがされていた。これは、木乃花ちゃんと陽葵ちゃんと僕で一緒に作ったのだ。


 子どもっぽいと思われかねないが、全然そんなことはない。


 ダイニングの机にはかなり豪華な食事が並べられ、名前すら知らないお高そうな食べ物も多くある。


 また、飲み物は炭酸やジュースなど様々な物が用意されている。とてもじゃないが四人で食べ切れる量ではない。


 逆に言えば、「好きなだけ食べろ」ということなのだ。とりあえず俺は、見たことない大きさの肉にかぶりついてみる。


「うまっ·····!?」


 あまりの美味しさに声が漏れる。口の中に広がる肉汁が、俺の全てを包み込んでくれるような感覚に陥れてくる。


「ふふっ。気に入っていただけたようで、私も嬉しいです」


 木乃花ちゃんはフォークとナイフを上手に扱い、ハンバーグを丁寧に切りながら言う。


 彼女の仕草は、見るからに「お嬢様そのもの」と言った感じだ。


 陽葵ちゃんはと言うと、そうでもない。なんと言うか、少し育ちのいい一般的な家庭に育ってきたような感じである。


 やはり、裕也が心配していたマナーとやらは気にしなくても良さそうだ。





「せっかくですので、今の進捗の確認でもしましょうか」


 木乃花ちゃんが、食べる手を止めて言う。進捗とは、ゲーム開発がどれくらい進んでいるかということだ。


「俺と姫は、キャラクター作りに専念してるんだ。風景とかはやっぱりシナリオができてからの方が良いと思ってな。元から作ってあったキャラクターの改良なんかをしているところだ」


 裕也が最初に言う。木乃花ちゃんとの共同でイラストやキャラデザなどを担当している。


 それよりも、木乃花姫って呼び方まだ続いてるんだ·····。


「結城さんと陽葵はどうですか?」


 木乃花ちゃんが俺たちに振ってくる。


「俺はストーリーの大幅な改善をしてて、陽葵ちゃんは細かいところの修正や確認をしてもらっている感じかな。変更点については後々、みんなにも見てもらおうかなって思ってるんだけど·····」


「結城にはボキャブラリーが少なすぎてダメダメよ」


 陽葵ちゃんが俺への文句を何の抵抗もなく言う。俺は意外と傷付くのだが、そんなことは彼女には関係ない。


 ·····いや、待てよ?


「俺にボキャブラリー少ないって言ったのって、俺が陽葵ちゃんを褒めた時だけだったよな·····?」


「はあ!? 全部だよ! 全部!」


 向かい側に座っていた陽葵ちゃんが俺の脛を蹴ってくる。全くと言っていいほどに容赦がない。


「あたっ。ちょっ、やめろって」


 俺は足と足を絡み付かせ、蹴れないように陽葵ちゃんを捕まえる。足からも感じる肌のフニフニ感とスベスベ度合いが本物のロリだ。


「もうー!!」


 陽葵ちゃんが暴れる。


 流石に抑えきれなくなって足の拘束を解くと、陽葵ちゃんは椅子ごと後ろに倒れた。


「ひゃっ!?」


 スカートがめくれ、子どもらしい柄のあるパンツが見える体勢になっている。身動きが取れないらしい。


「陽葵ちゃん!?」

「陽葵!?」


 俺は立ち上がって、陽葵ちゃんの元に駆け寄る。こんなことになるとは思わなかった。


 陽葵ちゃんの横に座っていた木乃花ちゃんも声をかける。


「ぜったい、絶対許さないんだから·····! うっ·····うぐっ」


 陽葵ちゃんが目に涙を浮かべる。一応大丈夫そうだったが、流石に可哀想になってきた。


 というかロリの泣き顔やっば·····。


 可愛い。


 無性に守ってあげたくなるその顔を俺は、少しばかり眺めていた。


 本当はもっと拝んでいたい。


 けれど、俺の良心はそれを許してはくれない。ロリを泣かせるなんて、ロリコンとして絶対にやってはいけないことなのだ。


 いや、ロリコンじゃなくてもロリは泣かせちゃダメだけどね?

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