第6話 気まずい車の中で
俺たち高校生には学校というものがある。それは、小学生の少女たちも同じだ。
高校生として過ごしつつも、その裏ではゲーム開発に勤しむエンジニア、クリエイターとして活動している。
言葉だけで聞くと、なんともかっこいいものだ。
現実は、ロリたちに頼りっぱなしのダメダメな生活を送っている、平凡だけど平凡じゃない高校生である。みっともない。
そして高校生の俺と裕也は、放課後の教室で他愛もない話をしていた。
木乃花ちゃんや陽葵ちゃんと仕事を始めてから、既に一週間以上経った頃。
「葵は今日の親睦会には来るよな?」
「そりゃ、行くしかないだろ」
ゲーム開発に際し、より仲を深めるために親睦会が行われることになったのである。
木乃花ちゃんが主催となってやるらしいが、そもそも親睦会をするほどに人は集まっていない。せいぜい四人だけのパーティーだろう。
「だよなあ。お金持ちの食事なんてどんなものが出てくるか分かったもんじゃないぜ·····」
「それで、その親睦会がどうしたんだ?」
俺が聞くと、裕也の顔がスッと真面目になる。
「相手はとんでもないお嬢様方だぞ? そういうものに参加したことない俺たちに、礼儀なんてものが分かるわけないし、心配で·····」
なんだ。そんなことか。今日はあいにく行けません、とかそういう話かと思った。
まあ、もしもそうなったら、俺が一人でロリたちをも食すのだけれど·····。
安心してくれ、冗談だ。
「そんなこと気にするなよ。いつも通りで良いんだよ。逆に今さら改まっても、やりにくいだろう?」
「そんなもんか·····」
「そんなもん。さて、そろそろお迎えが来る予定だったはずだ。行くぞ」
学校に細野さんが車で迎えに来てもらうことになっていたのだが、俺には心配事があった。それは、あの高級車で来るのかどうかということだ。
あの車は流石に目立ちすぎる。道行く人たちに二度見されていたことには、もちろん気付いている。
その車に、一般人の俺たちが乗るだなんてことになったら、目撃者に変な噂が立てられることは分かりきっているのだ。
そして、俺のそんな心配は見事的中した。
俺たちの目の前には、木乃花ちゃんと初めて会った、あの白くて立派な車が停まっていた。
「細野さん。この車だと流石に目立ちすぎるので、次からは別の車に変えられませんか? 周りからの視線が気になってしまって·····」
車に乗り込むやいなや、俺は言う。嫌味で言っているつもりはないのだが、少し図々しかっただろうか。
ちなみに、今日は車に木乃花ちゃんは乗っていないようだ。
「ですが、別の車だった場合、あなた方はどの車か分からないでしょう?」
細野さんはエンジンをかけて、車を走らせる。
「それくらい流石に分かりますよ」
俺たちは馬鹿にでもされているのか? そういうのは、運転手を見れば一目瞭然なのだ。なんせ、このとてつもなくデカイおっ──。
これ以上はやめておこう。俺はロリコンなこともあり、貧乳派なのだ。まるで巨乳に目移りしているかのような思考をしてはいけない。
「そうでしたか。今度からはもっと目立たない車でお迎えに上がりますね」
なんと言うべきか、細野さんは公私混同しない人だった。それゆえに、指示通りに動くロボットのような、そんな感じもしていた。
「そうしてくれると、こちらとしてもありがたいです。ね? 裕也?」
俺のせいで空気が重たくなってしまったので、裕也に全振りする。
後は任せた·····。
「俺に振るな。お前は大企業の社長の秘書さんに意見していいほど、大物じゃないんだぞ」
「·····はい。これからは木乃花ちゃんに言います·····」
見当違いな返答をしてみる。というか、木乃花ちゃんなら何でも聞いてくれそうだ。
「いえ、私でいいです」
細野さんがキッパリと言う。
これ、怒らせちゃった感じかな。
「すみません·····」
細野さんはきっと、木乃花ちゃんのことが好きなんだろう。
だからこそ彼女の秘書をやっているし、秘書だけに限定されずにその他の仕事も引き受けている、とかいう妄想に膨らむ。
そこからは誰も何も喋らない、沈黙の、気まずい時間が、木乃花ちゃん家に着くまで続いた。
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